第19話

「ふぅー」 

 

 僕は『空間把握』を使い、マリーナの情報を一切の誤差なく完璧に把握し、常に最善手を選びながら戦っていく。


 いくつもの剣戟音が響き、火花が散り続ける。

 

 戦闘の慣れという面でマリーナに劣る僕は驚異的な先読みでなんとか食らいついていく。


「……ちょっとずつ慣れてきましたか?」


「そうだねー。うん。見て習った分になら慣れてきたかな……あとは僕に最適な剣術に昇華させることだけど……」


「そこは魔法ありの方が良いでしょうか?」


「そうかも……」

 

 今、僕とマリーナがやっているのは魔法なしの近距離戦。

 マリーナは魔法を使っていないし、僕は『空間掌握』以外の魔法を使っていない。


「アーク様はすべての魔法をどうぞ。私は近距離用の魔法縛りで行きますね」

 

 僕とマリーナは一度足を止め、少し離れる。

 どれだけ僕が剣術、体術の技術をトレースしても素のステータスが圧倒的にマリーナの方が高いので、僕が互角に戦えることはない。

 だから、少しだけマリーナに制限を設けて手加減してもらう。


「そうしてくれるとありがたいよ」


 僕の得意属性は時空。その次に雷。

 

「『雷鳴よ』」

 

 僕の体に紫紺の雷鳴が轟き、僕の体を覆っていく。


「では私も……『業火よ』」

 

 雷を纏い、戦闘態勢に入った僕を見たマリーナも魔法を発動させて、紅蓮の業火をその身に纏う。


「……行くよ」


「いつでも大丈夫ですよ」

 

 僕とマリーナの戦いは剣術主体の戦いから剣術と魔法が折り混ざる戦いへと変化した。


「……儂、本気で引退を考えるべきじゃろうか。あそこの戦いについていける気がせんわい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る