第18話

 この世界には魔法と呼ばれるものが存在する。

 体内に存在する魔力を魔法陣や詠唱をすることによって力へと変え、奇跡を起こす術、魔法。

 そんな魔法には基本属性と言われる火、水、雷、風、土の5つの属性が存在し、多くの人がこの中から一つ。

 自分の得意な属性を持ってる。


 僕の得意属性は『時空』。

 基本属性には分類されない属性を僕は得意としていた。

 

「ハァァァァ!!!」

 

 剣聖としてその名を世界に轟かせる老年の爺さんであるシンネと僕の婚約者であるマリーナの繰り広げる超絶バトルを時空間魔法の一つである『空間掌握』を使い、息使いから足の運び方、剣の振り方、体の動かし方……それらすべてを完璧に把握し、記憶していく。


「これで終わりですッ!」

 

 人の次元を超えているのではと錯覚するような技の応酬の果てに……ほんの僅かの隙をマリーナに作り出されたシンネはそのまま流れるように敗北する。


「……は、ははは。新しき芽は実に怖いのぅ。老いぼれには敵わんわい」


「そんなに謙遜する必要はございませんよ。シンネ様は剣聖と言われる所以たる奥の手を使っていませんし、」


「そんなことを言うたらお主もまた魔法を使っておらぬじゃろうて……それに、あれは反則も良いところじゃしのぅ。本格的に儂も引退を考えるときが……」


「それは困るよ。シンネ。君もまた、帝国における重要な戦力であり、魔法を重視するこの帝国の中で数少ない近距離戦闘を重視する人間なんだ。帝国の人員の層を厚くする意味でもこれまで同様現役での活躍と後進の育成を期待しているよ」


 側で見ているだけだった僕はシンネとマリーナの会話に割り込み、刀を手に取る。


「アーク様。学習のほどは既に済んだでしょうか?」


「問題なく……まぁ、とりあえずは軽くやってみないとわからないけど、やろうか」


「承知致しました」

 

 僕の言葉にマリーナは頷く。

 『空間掌握』による把握能力と僕の生まれ持った記憶力があれば一度見た技、体の動かし方を完全に再現することが可能だ。

 既にシンネとマリーナの技術は覚えた……あとは僕のための剣術へと昇華させるだけ。


「胸を借りるつもりで行くよ」


「そ、そんないきなりおっぱいだなんて……あ、アーク様にならいつでも体を捧げられますので……わ、私のおっぱいをお好きなように……」


「違うわボケ」

 

 いきなり頭の中が花畑になったマリーナへと僕は真顔で突っ込む。なんで胸を借りるつもりで行くよがセクハラ発言へと変換されるんだ。

 ……いつでもオッケーなんですか?

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