第7話
「……う、嘘だ」
太った少年の口から漏れ出てくる震えた声。
「嘘じゃないさ……僕は他人が勝手にラインハルト公爵家の名を語るのを許すほど甘くはないよ」
もし、実際に誰かがラインハルト公爵家の名を語るようなことがあれば僕は一切遠慮なく徹底的に叩き潰すだろう。
「そ、そんな……いや、まさか。嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ」
「二度も俺に同じこと言わせるなよ?」
僕は容赦なく太った少年の胸倉を掴んで持ち上げ、にらみつける。
「てめぇは公爵家当主たる俺に喧嘩を売ったんだよ。目を逸らすな……俺の目を見ろ」
「ヒッ!?」
僕に睨みつけられた太った少年は情けない悲鳴を上げる。
「ふんっ」
僕は地面へと太った少年を投げつけ、上から彼を見下ろす。
「僕は寛大だからね。今回だけは見逃してあげる。でも……次にお前が誰かに絡んでいることを僕が見かけたらお前どころか家までまとめて叩き潰してやるから」
かつて……僕が公爵家当主になったばかりの頃に
ラインハルト公爵家と利益がぶつかり、良い感じに絞められたことのあるレイユール伯爵家。
一度絞めたことのある身から言わせてもらうのであればレイユール伯爵家を完全に叩き潰すのはそこまで大変な作業とはならないだろう。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああッ!!!」
太った少年並びにその取り巻きたちは悲鳴を上げて僕の前から逃げていった。
「大丈夫でしたか?」
かつらをかぶり直し、ラインハルト公爵家の家紋入りの
……既に僕が公爵家当主だとは周りに知れ渡ってしまっているので、また同じ変装をする必要は一切ないんだけどね。
「あ、はい」
僕の背後にいた少女は僕に言葉を向けられて呆然と声を上げる。
「……んー。ちょっと視線集めすぎじゃったかな」
公爵家当主。
その肩書きのインパクトは伯爵家の三男なんかとは比べ物にならない。
僕に向かって跪いている民衆もかなりいるし、移動している民衆も腰を低くし、視線を下げながら進んでいる。
「ちょっとだけ失礼するな」
「え?きゃっ」
僕は少女のことをお姫様抱っこで持ち上げる。
「少しだけ移動するね」
異空間収納から取り出した短剣を宙に向かって投げた僕は転移魔法を起動。
大空を舞う。
「ふぇ?」
「よっと」
再度短剣を投げ、転移。
人気の少ない裏路地へと降り立つ。
「ちょっと手荒いで移動でごめんね。あのままあおそこにいるのはちょっと違うかなって思ってね」
「あ、はい」
僕の腕から降ろされた少女はただ僕の言葉に頷くことしかできなかった。
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