第8話

 少女をつれて人気の少ない裏路地へとやってきた僕。


「それで?君はなんてあんなのに絡まれていたの?」

 

 正直に言って、僕はただ水戸黄門ごっこをして遊びたかっただけであり、少女の事情を聞く必要などないのだが、一応話に首を突っ込んだのだ。

 最後まで面倒を見た方が他の人からのイメージ的に良いだろう。


「え、あ……は、はい!」

 

 少女は突然の事態にあまり動揺し、訳も分からないままにとりあえず頷いているように見える。


「とりあえずは自己紹介からだよね。僕の名前はアーク・フォン・ラインハルト。少しだけ若いけどこれでもラインハルト公爵家の当主を勤めさせてもらっているよ。君の名前は?」


「は、ハッ!私の名前はマリア・ユスティーナ!ユスティーナ騎士爵の長女にございます」

 

 僕に名前を聞かれた少女、マリアは騎士らしい見事な敬礼を披露し、僕の言葉に答えた。


「なるほど。マリアね。よろしく」

 

 僕は彼女の言葉に頷き、手を差し伸べる。


「……ッ!?公爵家当主様と握手など恐れ多いです!」


「僕は言ったはずだよ?学生同士、身分差は関係ない。同じ騎士爵の三男坊として接してくれて構わないよ」


「そ、そんな……恐れ多い」


「それじゃあ、命令ね。僕を同じ身分だと思って接すること!命令だから却下はなし!」


「わ、わかりました……」


「敬語」


「わ、分かった……」

 

 僕の言葉にマリアは体を震わしながら答え、敬語を外した言葉で頷いた。


「よろしい」

  

 僕は素直なマリアを見て満足げに頷く。

 ……ちょっと僕が偉そうだな。同じ身分とは思えない。

 まぁ、良いか。ちょっと偉ぶっている子もいるよね。


「僕は今年から入る新入生なんだけど、マリアは何年生?」


「私は二年生だな。なので……あ、アークの一年上だな」


「あ、僕よりも先輩か……これは僕が敬語を使った方が良いですかね?」


「や、やめてください!?ただでさえ現状でも不敬極まりないのに、その上敬語で接されるなんてありえません!」


「敬語、残っているよ?」


「あ、ご、ごめん」


「まぁ……僕はこんな感じで敬語抜きで会話出来る子が欲しかったから僕も敬語なしで接するよ。あ、マリアが僕に敬語使ったら僕も敬語使うから」


「ヒッ!わ、分かった!絶対に敬語は使わない」


「……なんか無理やり感強くて対等感ないけど、まぁ、仕方ないよね。それで?マリアはなんであんなんに絡まれていたの?」

 

 僕は無理やり対等のような関係を作って見せたマリアになんで絡まれていたのか、その理由を再度尋ねた。

 

 

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