第9話

「え、えっとね……」

 

 僕の疑問を聞いたマリアは口を開く。


「ちょっとだけあの人とは因縁があって……少し前に学園で行われた試合で私が勝っちゃって……恥をかかせちゃったんだよね。うちの実家があの人の所属する派閥こともあって、ね。私の立場は最悪なんだよ……」


「ふむふむ……それならマリアの実家がラインハルト公爵家の派閥に属すれば解決するのでは?」

 

 国王を絶対とする王権派。

 国王にさほど権力を与えず、貴族が力を持つことを良しとする貴族派。

 これらの中立である中立派。

 主に貴族たちは大きく三つの派閥に別れ、そしてその三つの派閥の中でも公爵家や侯爵家などを頂点とする〇〇貴族派みたいな感じで多くの派閥が存在する。

 

 基本的に派閥を変えたりするのは良しとされないのだが、男爵や騎士爵などの下級貴族であれば派閥を変えることもある程度許される。

 マリアの実家が派閥内に居ずらくなったのであれば、ラインハルト公爵家の派閥に入れば解決だろう。

 僕と言う後ろ盾がマリアに出来ればこれ以上あいつがマリアに嫌がらせをすることは無理だろう。


「い、良いのかい!?」


「うん。僕はラインハルト公爵家当主。うちは他の公爵家と比べても頭一つ抜けているんだよね。だから、派閥は脆弱でないと他の公爵家の力のバランスが取れないからね。ある程度僕の好きなように出来るんだよ」

 

 ラインハルト公爵家は貴族派に属しており、自派閥の規模はかなり小さい。

 基本的にラインハルト公爵家のワンマンなので、僕の勝手な裁量で自派閥に他貴族を取り込んでも文句を言える家は派閥の中にいない。


「ふふふ……僕の派閥唯一の騎士爵だよ?光栄に思ってほしいよね」

 

「え、あっ……はい。ん?本当に良いの?」


「ん。良いよー。別に断る理由もないし?友達を守るのは友達の役目なんだよ?」


「あ、ありがとう……」


「それでなんだけどさ」


「な、何……?」


「マリアってばどこに住んでいる?学園に寮とかはないよね?」


「そ、そうだね。私は貧乏家だから安い借家を借りてそこで暮らしているよ」


「と、友達特典ってことで僕も泊めてくれない?ふらっと自由を求めて一人で帝都に来ちゃったから今日泊まるところないんだよね」

 

 僕の所持金はクソカス。

 串焼きを三本買うので精一杯程度の金額しか持ち合わせていない。


「は?」

 

 僕の言葉にマリアはぽかんと口を開けた。

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