第15話

 入学式から帰ってきた僕は。


「しょ、正気なの……?」

 

 僕が受ける予定の授業を聞いたマリアに正気を疑わていた。


「正気も正気。大真面目だけど?」

 

 僕が受けようと思っている学問は軍事学、奉仕学、地政学、農学、水産学、騎士道学、武学、魔法武学である。

 いやぁー、流石は偉大なる帝国が誇る学園。

 授業の種類が異常なまでに豊富である。


「受ける授業が公爵家当主のそれじゃないんだけど……」


「軍事学と地政学は当てはまるでしょ」

 

「……そのうちの片方ならともかく、両方受けることはまずないよ」


「軍事で地政学は大事だろ。戦略的組むときに地政学は絶対にいるだろ。絶対に守れなきゃいけない拠点とかわからないだろ、地政学知らなきゃ」


「そういう指令は他の人がするのが一般的だよ。それにその二つはまだしても他はおかしいでしょ。奉仕学と騎士学に関して言えば本当に意味不明だよ。あなたは奉仕学と騎士学を学んだ人を雇う側でしょ?」


「いや、部下の気持ちを知るのも大事かなって」


「そんなことよりも帝王学とか外交学とか……もっと勉強しなきゃいけないことがたくさんあると思うのだけど」


「ラインハルト公爵家の歴史の中で歴代最高と言われている僕が今更何を学べと?僕よりも優秀な上に立つ者が教師になっているの?どちらかと言うと僕が教える側でしょ」


「……確かに?」

 

 僕の言葉にマリアは首をかしげながらも頷きかける。


「いや、帝王学はいるでしょ……今の自分の姿見てみ?」

 

 だが、僕の姿を見て頷くのをやめたようだった。

 そんなマリアの言う僕の姿。

 安物の服に身を包み、安酒を流し込んでいる僕の姿のどこに不満があると言うのか。


「というか、なんで普通に酒飲んでいるの?年齢」


「公爵家当主をこんな些末なことで処罰できるか。別に公爵家当主としてしっかりしているときは真面目だから良いんだよ。カリスマ爆発しているから、普段の僕」


「……本当に?」


「本当だとも。じゃなきゃ歴代最高の当主とか呼ばれてない。うちの一族の優秀具合舐めないでよ?」

 

 この世界の深淵。

 神の領域へと足を踏み入れることに成功したラインハルト公爵家のチートぶりを舐めないでほしい。

 僕が理論的には完成させた『不老不死』の理論は自分で言うのもなんだが、本当に頭がおかしい。

 この理論を僕が完成出来るところにまで持ってきていたラインハルト公爵家当主たちは本物の怪物だろう。


「既に当主として問題なく働けている僕はわざわざこんな学園で当主として必要なことを勉強する意味ないし。普通に生きてたら僕がまず関わることのないことを勉強するほうが得だよね」


「そういうものなのかなぁ」

 

 マリアは僕の言葉に対して疑問を持ちつつも、なんとか納得したようだった。

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