第2話

 

 ラインハルト公爵家。

 

 地球と呼ばれる星の中央に位置する大陸であるユーホンス大陸。

 いや、地球にそんな大陸ないよ?ってツッコミを入れたくなりそうな世界観だが僕は目を瞑る。

 というか、なんで中央でわかるの……いや、目を瞑ろう。

 

 ユーホンス大陸に存在する三大国の一つである魔導帝国ティフォンの頂点に位置する皇帝一族の次に偉い三帝公爵家の一つであるラインハルト公爵家。

 名声も資金力も武力も最上級に位置するラインハルト公爵家の居城である屋敷は豪華の一言であり、元々ただの一般庶民でしかない僕には落ち着かない場所である。


「父上。ただいま、参上いたしました」

 

 ノックもなしに父上がいる執務室の扉を開き、中へと入る。


「うむ。よく来たな」

 

 中にいる父上。

 深い闇を携えた深淵を思わせる青い瞳にくすんだ金髪を持った男……彼は部屋に入ってきた僕のことを静かに見つめている。

 ……いや、その深い闇を携えた青い瞳は僕を見ているようで、見ていない。


「よっと」

 

 僕は執務室に置かれている椅子の上に座り、風魔法を使って執務室に置かれているものを操って紅茶を淹れ、自分の手元に持ってくる。


「それで?何の用でしょうか?」

 

 紅茶を胃の中に流し込む僕は父上へと用件を尋ねる。


「相変わらずお前は年齢に見合わぬ有能さよ」


「……ありがとうございます?」

 

 僕は自分の言葉を無視して褒めてくる父上に言葉を返し、用件を待つ。


「魔法だけで見れば既に長男も次男も軽く超え……時折見せるその智謀の片鱗を見れば既にお前は智謀の面でも長男、次男よりも優れているとさえ見える。もし、お前が長男として生まれていたのならば歴代で最も優秀なラインハルト公爵家当主となっただろう」

 

 ふむ。

 いつもは面倒くさい父上がここまで僕を褒めるとは……なんだろうか。あまり良い予感はしない。


「買いかぶりすぎですよ。それよりも僕を呼びつけた用件はなんでしょうか?


「焦るな。その焦りはお前の唯一の欠点だぞ?」


「父上の前以外ではせっかちじゃないですよ?僕。早くお昼寝に戻りたいんですよ」


「くくく……そうか。お前らしい。では、手短に用件を告げようか」


「はい」


「お前にそこそこの大きさの商会を一つ任せる。自由にやる権利を与える代わりに三年以内に帝国内でも有数の大商会にしてみせろ」


「……ん?」

 

 父上の言葉を聞いた僕は固まった。


「これから忙しくなるぞ?アーク。お前の有能さを私は買っているのだよ。もっと活用してもらおう。出し惜しみなど許さんぞ?」


「うへぇ……」

 

 僕は楽しそうに頬を緩ませる父上を前に……心底嫌な声を上げた。

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