第16話
結局。
僕程度の気配察知能力ではついぞマリーナを見つけることが出来なかった。
「アーク様!こんなところにいたんですか!」
歩き回っていた僕に呼びかけ、背中にパン詰まりとなっている巨大なリュックを背負ってきたマリーナ。
「マリーナを追いかけていたんだけど、見つからなくて……ごめんね」
「あ、すみません……気配を周りと同化しながら存在しているのが癖になっているものでして、私」
「すごいよね……まったく察知出来なかったよ」
「お褒めに預かり光栄です」
僕の言葉を聞いたマリーナは恭しく頭を下げる。
「それでは修行ですね!必ずや私が混沌竜を倒せるように鍛えて見せます!早速やっていきましょうか!」
意気揚々と歩き出そうとするマリーナを僕は呼び止める。
「あ、その前に南の方に向かっちゃうよ……ここでやりたくはないからね」
混沌竜の討伐を悠長にやっているわけにもいかない。
サクッとドラゴンスレイヤーの称号を手にしてここの領地へと戻ってこよう。
「了解です!」
僕の言葉にマリーナが元気よく頷く。
「何か準備するもの、持っていくものなどはありますでしょうか?」
「ないかな。どうせ向こうにも僕傘下の商会があるし。全部用意してもらえちゃうからね。僕の武器も既に送ってある」
「なるほど。そうですか……それではまた空の旅ですね」
「そうだね」
王都からラインハルト公爵領に戻ってきて、その日のうちに今度は北の方に位置するラインハルト公爵領とは真逆の南の方へと向かう。
なんて多忙な日々を送っているのだろうか……僕は。
これもすべて僕に無理難題を押し付けてくる父上のせいである。絶対に許さない。
「飛行魔法の負担、残り魔力などは大丈夫でしょうか……?最悪の場合でしたら、私が抱えていきますが……」
「いや、大丈夫だよ。これでも魔力量はまぁまぁ多い方だからね」
生まれながらの天才性はカンストしている……大半が才能によって決まる総魔力量はかなり多い方であると自負している。
「それでは向かいましょうか」
「うん」
僕とマリーナは共に廊下の窓から飛び出し、特に挨拶をすることもなくラインハルト公爵領から出たのだった。
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