第21話

 第一回目の武学の授業。

 まず授業で行われたのは模擬戦であった。


「この……ッ!この……ッ!このクソ平民がァ!!!」

 

 魔法を禁じ、本来の肉体スペックの9割9分を封じ、使っている技量も本来の半分で歩行術と剣術と体術しか使わないという縛りプレイで戦っている僕は目の前で必死に剣を振り回している男を見て冷静に交わしていく。

 

 平民相手に苦戦している。

 そんな受け入れがたい事実を前にした男は体を震わせ、顔を赤く染めて必死の形相で剣を振るう。

 そんな精神状態で振るわれる剣はどんどん大振りになっていく。


「空いた」


「あぐっ!?」

 

 そして、致命的な隙を晒した瞬間、僕は一気に動き出して剣を振るう。

 

「ぬぁ!?」

 

 一度崩れたら立て直すのは難しい。

 たった一つのミスに漬け込んで攻め立て、そのまま男の手に握られている剣を弾き飛ばす。


「終わりです」

 

 最後に首元へと僕が剣を突きつければ終わり。

 僕の完全勝利である。


「勝者、アルト!勝者は武舞台に残り、敗者は退場を」

 

 模擬戦の様式は勝ち抜き戦。

 勝った人が武舞台に残り、負けた人が武舞台から降りて、また新しい人が来る。

 そんなやり方だ。


「強いね、君は」

 

 武舞台。

 そこに一人のイケメンが上がってくる。

 彼の名前は……ちょっと忘れちゃったけど、確か侯爵家の次男でなんかものすごく強い的な話が社交界に流れていた男だ。


「……全く。君は本当に平民なのかい?そうとは思えない強さだよ。向こうの武舞台では君と同じく平民の子が勝ち続けているみたいだし」

 

 武舞台は一つじゃない。

 全部で三つあり、そのうちの二つの武舞台に勝者として立っているのが平民。

 僕とエレトリアが勝者とした武舞台に残り続けていた。

 

 ちなみにスーシアはちゃんと平民らしく一回目の戦いで負けていた。


「平民でありながらその領域に達するまでの努力。称賛に値する……けどね。僕たち貴族は多くの人の前に立ち、義務を果たす存在だ。ずっと守るべき平民に負けているわけにはいかない。ここで貴族の力と誇りを見せてあげよう」


「お手柔らかにお願いしますね?自分が勝ちますが」


「ハッハッハッハ!その不遜な態度!嫌いじゃない!行くぞ!」


「えぇ」

 

 縛りプレイをしている僕は限られた手札の中でも相手に勝てるよう最大限の努力をしていた。

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