第5話

 家臣どころか実の姉にまで自分の情事の声を聞かれていたという事実から目を背けるようにラインハルト公爵邸から逃げるように僕は学園へと舞い戻ってきた。

 学園再開まで一週間あるが、そんなものは知ったことではない。

 僕はできるだけ早くラインハルト公爵邸から逃げたかったのだ。


「あぁー。久しぶりの我が家。帰ってきた感があるね」


「……うん。ここはあなたの家ではないわ。さっきまで居たわよね?家に」


「あそこはもう家じゃない。もう二度といかない……」


「えぇ?そんなの大問題よ!何があったのか知らないけど、ちゃんと戻らないと!」


「……僕たちの初夜が屋敷にいる全員に聞かれてた」


「えっ……?」

 

 僕の発言を聞いたマリアが固まる。


「ふぇ?」

 

「えっ?ほ、本当に……?本当の本当なの?」


「うん。本当の本当」


「……」


「……」

 

 僕とマリアは無言で見つめ合う。

 言葉は、もう要らない。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああッ!!!」

 

 羞恥心が爆発してしまったのだろう。

 マリアはベッドに転がって発狂する。


「……うん」

 

 僕は近所迷惑にならないよう、防音の魔法をこの部屋全体に張り巡らせる。


「うん。じゃあ、僕はちょっと出かけてくるね」

 

 しばらくは羞恥心で発狂しているであろうマリアをそのままに僕はお外へと出る。


「あいつはちゃんと出来ているのかねえ」

 

 あまり心配はしていないが、今は大変な時期。

 僕はとあるところに向かって歩いていった。

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