第31話
「な、何を言って……父上ッ!リリーシャッ!?」
このおぞましい地下室へと足を踏み入れ、顔を蒼白にして吐きそうになっているユーラス兄上は僕の足元に倒れる父上とリリーシャ姉上を見て動揺の声を上げる。
「貴様ァッ!!!貴様がッ!貴様がやったのか!?この地下室もッ!お前が!?」
当然。
血まみれの僕を見れば、二人を殺し……この地下室を作ったのが僕だと思うだろう。
「何をおっしゃいますか。兄上……ここで、地下室でおぞましい実験を繰り返していたのは父上とユーラス兄上でしょう?父上と兄上が時折二人で人気のない場所に向かっているのを確認している使用人は多いはずですよ」
そんな当たり前の考えの元、告げられるユーラス兄上の言葉に対する僕の返答はこうである。
「ま、まさかッ!貴様……己の罪を私たちに被せるつもりで……」
「ううん」
僕はユーラス兄上の言葉に首を横へと降る。
「リリーシャ姉上を殺したのは父上だし、この地下室でおぞましい実験を繰り返していたのは父上並びにラインハルト公爵家のご先祖様たち。僕じゃこんなラインハルト公爵家の屋敷のすぐ近くに秘密の地下室なんて作れないし、作らないよ」
こんなラインハルト公爵家の近くに地下室を作れる存在など限られているし、多くの商会を持つ僕がわざわざリスクを犯してこんなところに建てるはずがない。
少し考えればここに地下室を作った存在が父上である可能性が最も高いことがわかるだろう。
「ま、まさか……」
ユーラス兄上は特別優秀でもないが、馬鹿じゃない。
ここで僕が何をしようとしているのか、なんとなく察せるだろう。
「私を共犯者として……」
「はい。断罪させてもらいます。僕が当主になるために……長年倒せなかった混沌竜を殺したドラゴンスレイヤーの英雄が非道な実験を繰り返し、長女を殺した家族殺しの現当主と次期当主筆頭候補を倒して当主へと君臨する」
「それが……お前の、策略……と、当主になる」
「気満々ですよ?僕……でも、わざわざ兄上の前で牙を出すような真似はしませんよ?」
「……ぁ」
「見せるのは最後の一瞬だけです」
「やはりおま────ッ」
僕は大地を蹴り、兄上へと迫る。
ユーラス兄上も公爵家の次期当主候補、筆頭である男だ。
当然雑魚じゃないし、そこそこの強さを持っているけど、その強さは父上にも劣る。
僕の敵になりえるような人ではなかった。
「ごめんね」
あっさりと。
僕はユーラス兄上の首を斬り落とし、すべてを終わらせて見せた。
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