第30話
「……あぁァァァァアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」
僕に押され、刀を向けられる父上は発狂し、頭をかき散らす。
「このッ!親不孝者めがァ!世界の至宝をわからぬ愚か者がァッ!!!断じてぇッ!許せるものでなしッ!!!」
充血した視線をこちらへと向けてくる父上の姿は決して正気とは思えなかった。
「僕と父上ではあまりにも力の差がありすぎる」
父上も十二分に強い。
しかし、僕の方が強い。
「死ね死ね死ねぇぇぇぇぇええええええええええ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ッ!」
僕へと向けられる父上の魔法をすべて回避し、己の手に握られている刀でいとも容易く父上の心臓を貫く。
「ごっぷ……」
あっさりと心臓を貫かれた父上の口から多くの血が溢れ……血が流れていく。
「不死化の魔法は発動させませんよ。まだちょっとだけ準備不足だと思いますが……それでも十分発動可能でしょうから」
僕は父上から流れている血へと足を置き、血へと刻み込まれた魔法陣に干渉していく。
「……ぁ?」
父上の魔法。
自身の生を特別な加工を施した死者へと押し付け、自身に不完全な死を植え付けることで不老不死を手にするための魔法。
その魔法を使ってリリーシャ姉上に自分の生を押し付けようとした父上の魔法をやんわりと壊していく。
「な、何故……?」
自身の魔法が壊されたことを悟った父上は理解出来ないと言わんばかりに声を漏らす。
「ふふふ。こんなにも実験結果が転がっていれば嫌でも習得出来ますよ。僕も一応父上と同じくらいの技量を持った死霊術師です。死にかけの父上が使う魔法を壊すくらいのことは出来ますよ」
「……っ……っ」
僕の言葉を聞いた父上は驚愕に目を見開き、パクパクと口を開くも、その口からはっきりとした言葉が出てこない。
今、父上を襲っているのは不完全な死ではなく、完全なる死。
もうまもなくこの男は死ぬだろう。
「まぁ……どうせ生贄不足で上手くいかなかっただろうから、父上のすべてとも言える魔法を最後の情けで発動させてあげても良かったけど……一応止めさせてもらったよ。僕じゃ対処出来ないような事態になる可能性も捨てきれなかったしね」
父上の魔法は生贄不足のため、リリーシャ姉上を生き返らせることは出来ないだろうし、不死化も中途半端になって父上の意思が吹き飛んじゃうだろう。
別に発動させてあげても父上の思う形にならなかっただろうが、不死化となった知性なき不死の化け物が出来上がったら僕でも勝てない可能性があるので、父上の最後の魔法を発動させてあげない。
「ここまでで終わりですよ。父上」
僕は父上の心臓を貫いていた刀を抜く。
「……ぁ」
父上は力なく倒れ……既に事切れているリリーシャ姉上へと震える手を伸ばしていく。
「さようなら。地獄で安らかに。それと……その汚い手をリリーシャ姉上に向けても姉上は嫌がるだけだと思うよ」
リリーシャ姉上へと伸ばされる父上の震える手を僕は踏み潰し、そのまま別れの言葉を告げた。
「な、なんだ……ここは……」
父上が完全に死んだ。
そんなとき、また新しい声が地下室内に響き渡ってくる。
「あぁ……あなたも父上の共謀者ですか」
僕の思い通り、ここへとやってきてしまった長男、ユーラス兄上へと僕は笑みを向けた。
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