第31話
「アーク様ぁー、お腹すきました!一緒に何か作りましょう!」
「バッチリとランチを楽しんだお前が言うべき内容の言葉じゃないかな。うん」
「……権力社会って残酷ですね」
「それは僕らが言う内容じゃないんよな。前線の兵士たちが言う内容なんだよね」
「む?前線の兵士たちは不敬罪を犯していると?」
「それくらい良いだろう」
「許しません!ここに呼びつけ、カツ丼を食わせながら事実かどうかを吐かせます!」
「前線が崩壊するからやめろ……飯、ね。夕食でも作るか」
「はい。そうしましょう!お願いします!」
「……一緒にって言っていなかった?」
「言葉の綾ですよ。私に料理なんて無理です。貴族ですよ?」
「僕だって貴族だけどね……まぁ、作れるから良いけど」
貴族は料理なんてしない。
前世においてただの一市民……料理も行うような僕だったからこそ料理が作れるだけなのである。
「ふんふんふーん」
僕はキッチンに立ち、料理を作る。
公爵家当主である僕とリーナ嬢の仮の住まいとしている戦場に立てられた小屋にはちゃんとキッチンまで配備されている。
「……アーク様ってやっぱり見た目カッコいいですよね」
「カッコいいよりもかわいいよりだと思うけどね……イケメンこそが正義であるのは歴史が証明している。僕は自分を麗しく産んでくれた親に感謝しているけど、欲を言えばもう少し男らしく産んでほしかったね」
僕の身長は平均よりもだいぶ小さく、線も細くて、童顔。
見た目は麗しいが、威圧感があると言われるかと言うと首を傾げざるを得ない。
「アーク様はそのままであるからこそ価値があるんですよ?見た目の威圧さもアーク様が出している普段の雰囲気であれば問題ありません。アーク様を見くびる人間はいません。白銀のように美しい銀色の髪に、私を見つめる優しく温かい水色の瞳に整った顔立ち……すべてが完璧です」
……寒色である青は優しさからは遠くないか?
「クッ。所詮リーナ嬢は僕の見た目にしか興味がないんだね!お前もそうなのか!」
僕は迫真の演技で声を荒らげる。
「たしかに最初は見た目です。圧倒的な一目惚れです。ですが、それだけではありませんよ?アーク様の普段の私生活や態度……それら全てを愛しているのです」
「それをど……あぁ、うん。そうだね」
僕は目の前の女がストーカーだったことを思い出し、言葉を途中で止めて誤魔化し、料理を作る腕を動かした。
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