第17話

 平民同士(片方は公爵家当主)で仲良く談笑していると、新しく教室へと入ってきた少女に話しかけられる。


「教室に入ってくる前、少し話が聞こえてたんだけど……二人とも私と同じなのかな?」


「おっ!あなたも平民なの!私と一緒ね。私の名前はスーシア。よろしく」


「僕はアルトだよ」

 

 話しかけてきた少女。

 やたらと良いスタイルに肩まで伸びた黒髪に紫色の瞳を持ったしょう……ん?どこかで見たことがあるような……いや、気のせいか。

 公爵家当主である僕は基本的に平民と会話することなんてないわけだし。


「私はエレトリア。よろしくね。二人とも!」

 

 新しく話しかけてきた少女はエレトリアと名乗り、笑みを向けてくる。


「おぉ……!これで平民の数は三人!一人もいないような年もある中で三人もいるとは!これで安心出来る……ッ!」

 

 正確には二人である。

 

「人は群れた方が強いからね!三人寄れば文殊の知恵だよ!」


「まぁでも平民三人とか貴族の気まぐれで簡単に吹き飛ばされるけどね」

 

 僕の言葉に対してエレトリアマジレスを噛ます。

 平民三人を消し飛ばすなんて公爵家当主たる僕どころか、最低限の影響力を持っている貴族の子供であれば可能だろう。

 平民の命は……実に儚い。


「……まぁね」


「そうだよ……貴族は、実に恐ろしい……」

 

 スーシアは体を震わせながらそう告げる。


「えぇ……まったくもってそうね」

 

「ハハハ……うん。そうだね」

 

 僕はスーシアの言葉に頷く。

 ……なんというか、罪悪感が結構すごいね。


「クラス1になんて絶対に近づけません!第三皇子殿下に公爵令嬢様。巷では死者の王と恐れられている性悪の公爵家当主までいるのです!?魔境です!」


 本人を前にしてめちゃくちゃ悪口言ってきているけど……本当に僕がここで正体を明かしたらこの子はどんな反応をするのだろうか?


「……ァ?」


「「ひぃ!?」」

 

 何が勘に触ったのか。

 いきなりドスの利いた声を上げたエレトリアに僕とスーシアは悲鳴を上げる。


「私、ラインハルト公爵家の当主様の熱心な信奉者だから。あのお方を馬鹿にしないで」


「す、すみませんんん……」

 

 スーシアはブチ切れるエレトリアにへこへこと頭を下げる。


「思想が強い……ッ」

 

 僕たち平民組三人(一人は公爵家当主)は教室でワイワイと会話を交わす。


「……し、静かに!貴族っぽい人たちが来た!」

 

 僕たちのいる教室に装飾品を身に着けた男爵の子供たちっぽい集団が入ってきたのを見て、僕たち三人の声のボリュームは一気に下がったのだった。

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