第37話
白い糸。
白い糸、白い糸、白い糸。
僕の視界に入り、僕の行動を阻害する白い糸。
「……あぁァァァァアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」
体を動かし、すべてを引きちぎる。
「……あぁァァァァアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!」
引きちぎって、引きちぎって、引きちぎって。
僕の動きを制限する白い糸を壊し、僕は吠える。
認められるだろうか?
リーナ嬢が死ぬことを。
認められるわけがない。
これは、ただの僕の願いだ……くだらない……そう、僕のつまらない願いだ。
「……」
魔法が、初めて使う魔法が、発動する。
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空が分厚い雲に覆われ、雨が降り注ぐ一つの戦線。
既に敵兵が死に絶え、無惨な肉片となった死体と雨で崩れる土が混ざった死の大地。
そんな地面を人間の足が叩き、血と雨が跳ねる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「アーク様とリーナ様はどこだッ!?」
未だ姿の見えないアークとリーナを探し、一つの中隊が大地を走る。
「いたッ!」
戦線の一角。
そこにいたアークとリーナの元に兵士たちが近づいていく。
「……リーナ、様?」
アークの膝の上に眠るリーナが血に濡れているところを確認し、兵士たちの間に動揺が広がっていく。
そんな時。
ふわりと……風が靡き、血と小石がゆっくりと上っていく。
「余は……」
後ろに振り向き、中隊の方へと視線を送ったアーク。
「死霊之王」
その髪が黒く染まり、瞳が血のように赤く染まる。
「「「……ッ!?」」」
血に飢えたような禍々しい真紅の瞳を前に兵士たちは全員息を呑み、一歩。
後ずさる。
「余の前に死を晒せ」
膨れ、持ち上がり、破裂する。
兵士たちがただのタンパク質となって地面に倒れ、静寂が訪れる。
「良く来たね……私の領域に」
死靈之王を名乗るアーク。
その傍らに魔王たるロキが舞い降りた。
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