第7話

 帝国随一の大商会。

 その商会長の部屋に相応しき豪華な部屋に置かれている椅子に僕とリヴィアは互いに向き合って座る。


「それで……?私に何の用でしょうか?あ、アーク様が何の用もなしに来るとは思えませんし」


「現在の情勢だから。色々と忙しくなっただろう。問題がないかと思ってな」


「……ッ!アーク様が私の心配を。ありがとうございます」


「心配くらいはするさ。僕と君はビジネスパートナーなのだから……それで?問題は今のところないか?」


「ありません。元より私の商会は他国で戦争を引き起こさせ、その軍需需要を満たすことで金銭を得ていましたので。魔族が人類に対して戦争行動を働いてくれる……むしろこちらから戦争を引き起こさなくて済む分、こちらのほうが楽と言えますね」


「ふむ……軍需品、食料人はもちろんのことだが……インフラや衣類、娯楽品なんかも必要となってくるだろう。それらの準備はどうだろうか?」


「そちらの方も問題なく取り組んでおります……売春に関してはどこまで女を戦場に持っていくか、決まっていませんが……現在会議中ですので、すぐ決まるかと」


「なるほど。どうやら問題ないようだな……後、気になるのはこれらの騒動が与える経済界への影響だが」


「あの男に任せておけば問題ないかと」


「まぁ、そうだね」

 

 うちのグループの金庫番として働いてくれているウォルフの金に関する嗅覚は本物だ。

 経済の動きを見るという一点では僕よりも能力が高い……そんな男だ。

 あの男に任せている以上、経済に関する心配は要らないだろう……出身も出身だからある程度の確認はするけど。


「僕は既に帝都の方に戻ってきた……これからも基本的には帝都の方にいることになると思うから、何かあったら報告よろしくね」


「承知致しました」


「じゃあね」


 僕はリヴィアに別れの言葉を告げ、椅子から立ち上がる。


「あっ……」


「ん?何か?」


「……いえ、なんでも無いです」


「……ん。じゃあ、また今度。今後とも頑張ってね」

 

 僕は寂しそうにしているリヴィアを置いて商会長室から出ていった。

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