運動公園1
◇
「方角的に野球場じゃなくて広場のほうかな……」
一行を先導する
多種多様な施設をかかえる運動公園は、迷路のように通路が入り組んでいて、地図なしで目的地にたどり着くのは、ひと苦労かもしれない。
「何か楽しいですね」
後ろを歩いている
辻さんは一年後輩に当たる小柄な女の子だ。笑顔の絶えない明るい子で、その天真爛漫さと社交性を武器に、入部から三ヶ月足らずで、すっかり文芸部にとけ込んでしまった。
そのとなりを歩く
物静かで大人びた性格だけど、意外に気が強い。面倒見の良いしっかり者なので、辻さんから姉のようにしたわれている。
「それにしても、小谷くんがこんなことに興味を持つとは意外だったな」
土井先輩の疑問に自分も同感だ。
小谷先輩はその理由をこう説明した。
「十数年前に、高校生が集団で
「そういえば、この公園で一緒にいるところを、目撃されてたんだっけ」
その話は自分も知っている。近所で起きた大事件として、小さい頃から、事あるごとに耳にした。とはいえ、事件が起きたのは自分が生まれる前のこと。今まで、強い関心をいだいたことはない。
「何で、こんな早い時間に来たの? 明るかったらUFOなんて探せないでしょ?」
時刻はまだ午後二時を少し回ったところ。木陰に逃げたくなる
「UFOは
「後回しでいいわ」
小谷先輩はそっけなく申し出を断った。
「あと、
◇
それから、土井先輩の案内で公園内を散策した。目的地に着くたび、事前に調べてきたとうい超常現象ネタが披露される。
それは、ある樹木の根元付近だけこおりついていた話や、風でなぎ倒された雑草が、ミステリーサークルばりのうず巻き模様をえがいていた話など。
二時間も経過した頃には話の種がつきた。敷地内もあらかた回りつくし、UFOにめぐり会うこともかなわなかった。
僕らは運動公園の西側に位置する広場で、足を休めることにした。そこはUFOを目撃した方向にあることに加え、
広場のベンチでひと息入れると、元気のあり余っていた辻さんが、退屈しのぎにクイズを始めた。
「あれは何でしょう」
広場を囲む樹木や草花を指さして問題を出す。二人の先輩が、すずしい顔で解答を競い合う。張り合う知識のない自分は、傍観者を決め込んだ。
自分が言い出したのではないけど、このままでは立つ瀬がない。発光物体の出現を切望し、うらめしそうに空を見上げる。
目をこらしてみると、草むらの一角から、黒いひと筋の煙が弱々しく立ちのぼっていた。
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