デリックの悔恨
◆
戦闘はその日のうちに終結した。
同日、屋敷の一室でデリック・ソーンへの
デリックは拘束された状態でイスに座らされた。正面にパトリックが立ち、両脇に侵入者対策室のニコラとケントが控えている。ウォルターとクレアも同席していたが、部屋のすみから見守っていた。
どこで道をまちがえたのか。デリックは過去を振り返った。
ローメーカーの
しかし、三人の兄がいる中流貴族の生まれで、魔法の才能にも恵まれていなかった。
手始めに、ベレスフォード卿に取り入って、水運事業を立ち上げた。〈侵入者〉から
さらに、水夫は『忘れやすい人々』では務められないため、
それでも、デリックは
さらに、〈侵入者〉からの指示だったとはいえ、アシュリーの両親の殺害や、
ローメーカーは多くの血を流すことを好まない。敵の内部に協力者をつくり、電撃作戦によって敵の
メイフィールドの開発計画はその
しかし、
共に国を打ち立てた
さらに、ローメーカーが新しい能力欲しさに、『
反乱によって、半数以上の〈侵入者〉が引き上げられた。デリックの事業――攻略作戦の準備工作はたちまち
それが今回の
◆
「あなた達が反乱を起こした目的を聞かせてください。いいですか?」
「嫌ですよ」
デリックが挑発的な笑みをうかべ、パトリックを見上げた。
「あなたの能力は聞かされている。確か、名前は〈
「自分がどんな状況に置かれているのか、わかっているのか!?」
ケントが相手の肩をつかんで声を
「わかっているからですよ。数々の
デリックは開き直った。パトリックは
「あなたの部下がどこへ逃げたか心当たりはありませんか? あと、能力者の女についての情報もお願いします」
「それを教えたら逃がしてくれるんですか?」
「それはお約束できません」
「それならできない相談です」
その後の質問もはぐらかすばかりで、デリックはまともに取り合わなかった。パトリックは大きなため息をついて、ニコラに顔を向けた。
「仕方がありません。もしかしたら、
「は、はい」
ニコラはとまどい気味に応じ、ケントと顔を見合わせた。パトリックが独断で進められる領域を
口で処刑を覚悟していると言っても、デリックは動揺を隠せない。パトリックは部屋を立ち去ろうとしたが、すぐに足を止めると、冷たい表情でこう言った。
「何か、言い残したことがありましたら。いいですか?」
デリックは心ここにあらずといった様子で沈黙し、パトリックの
「クククッ」
せせら笑ったかと思うと、
「お前らは知らないだろうが、〈外の世界〉で
〈
何でもできるというわけではない。例えば、能力の共有は対象者同士が
制限はたった一つ。条文の内容が対象者にとって平等であること。一方だけが利益を得ることも、不利益をこうむることもあってはならない。そのため、非能力者はローメーカーの『盟約』に参加できない。
「この国に〈侵入者〉を送り続けたトランスポーターが、数年前、ついにローメーカーの
サイコという複数の能力を持つ存在から、一時的な能力の貸し借りが行えると、パトリックは推測していた。しかし、デリックの証言内容は仮説として最悪の
「実際、ハンプトン商会の水夫――要は、今回の反乱に参加した兵士たちはほぼ〈侵入者〉だった。さらに、もう一つうれしい知らせだ。
俺たちに勝っていい気になっているようだが、今回の反乱は単なる
本命の総攻撃が数日以内に始まると聞いている。七つの能力を持つ能力者が複数やって来る上に、人間を
ふるえながら待っていろ。もう、この国は終わりだ。今のうちに、せいぜい我が世の春を
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