ゴーレムの襲撃(前)
◆
時を同じくして、ジェネラル一行と
けれど、屋敷を管理する使用人に事情を聞いても、スプーに関する情報は特に得られなかった。休暇の時以外はめったに屋敷へ戻らないという話だった。
スプーは
屋敷内をくまなく捜索しても、〈侵入者〉である証拠や、仲間に関する手がかりは見つからなかった。それどころか、生活の
一方、詰所の同僚に事情を聞くと、休日に一人で出かけるところをたびたび目撃されていた。そして、
「やはり、〈樹海〉の奥深くまで分け入る必要がありそうですね」
「そうだな」
◆
スプーとネクロは一週間ほどで〈樹海〉
その途中、たまたま山中で遭遇したゾンビを、ネクロの新たな『
「魔法が使えないのか」
ネクロは不満顔を見せたが、スプーはこう相手を黙らせた。
「
自身の屋敷はすでに捜査の手がおよんでいるとふみ、スプーは〈樹海〉へ直行したが、そこに対する本格的な調査も始まっていた。
(これ以上〈樹海〉を探られてはマズい。どうにかして、手を引かせなければ)
ローメーカー陣営とかわした総攻撃の
試験は済ませたが、現在は〈樹海〉の奥地で
「ネクロ。すぐに動かせるのが、近くに一体置いてあっただろ」
「あのキースとかいう魔導士を殺しちゃったやつかい?」
キースは魔導士失踪事件の被害者。野生動物を相手に、試験的に動かしていたのを目撃され、彼らは
「ああ。それを使って
◆
その日、ネイサンとスコット――〈資料室〉コンビの二人は、ストロングホールドの中央
大広間が騒がしいのに気づいて行ってみると、入口付近で人だかりができていた。
「何かあったのか?」
「岩のかたまりみたいな巨人が市街に入ってきたとかで」
「岩のかたまり……?」
一人の魔導士が息を切らしながら入ってきた。
「急げ! 巨人が暴れ始めたぞ!」
次々と魔導士たちが外へ飛びだしていく。ネイサンとスコットも後に続いた。
現場に近づくと、悲鳴や
「来ました! 巨人です!」
他の魔導士たちにならって、ネイサンたちも建物のかげに身をひそめた。その方向に、太陽を背にした巨大な黒い影が見え、やがて、ズン、ズンと
まさしく岩の巨人が、肩を怒らせながら、通りの中央を我が物顔で進んでいる。
「何だアレ……」
「立派に成長したじゃないか」
五年前に対峙した
完全な
予想だにしない怪物の登場によって、ネイサンは恐怖に身をふるわせたが、それ以上に心がふるえた。
仲間の無念を晴らすチャンスが
きっとやつらが近くにいる。そう思いながらも、まずは目の前の巨人に集中しようと自身をいましめ、向かいの通りにいた魔導士へ大声で呼びかけた。
「ジェネラルはどうしてる!」
「今日中に帰還する予定ですが、まだ戻ってきていません!」
「〈
身をかがめた魔導士が
ゴーレムはビクッと動きを止めた。だが、それはまばたきする程度の時間。すぐに攻撃が飛んできた方向を振り向き、そちらへかけ足で進んだ。
しかし、魔導士がすばやく路地に引き上げたため、目標を見失って立ち止まった。
「ダメです! 効果ありません!」
「見かけ倒しじゃないな。
泥人形は『電撃』を受ければ、しばらく
「あまり足は速くないですね」
「いや、
ゴーレムの目標は定まらない。動きの激しい人間に注意をひかれるようだが、視界から消えると、それをコロコロと切りかえた。
その時、別方向を見ていたゴーレムの
それを認めたゴーレムが
「危ない」
スコットが助けに入ろうとしたが、
だが、ゴーレムはあきらめなかった。自身の体より小さな扉をけ破り、そこから腕を差し入れ、建物内をまさぐり始めた。
「イマイチ行動パターンがつかめないな。あやつっているやつがいるのか?」
「それにしてはマヌケですよね」
「目的は何だと思う? ただ、暴れたいだけか?」
「あれ、ほうっておいていいんですか?」
ゴーレムは扉の周辺をガンガンとコブシでなぐり始めた。見かねた別の魔導士が『
ゴーレムはそちらへ関心を移したが、攻撃の
「俺たちものん気に観戦している場合じゃないな。『風』のスペシャリストさん。試したいことがあるから、二秒くらい足止めできないか?」
「やってもいいですけど、何をするんですか?」
「
「わかりました。けど、ブランクが長いんだから、ムチャしないでくださいよ」
「よけいなお世話だ」
ネイサンが『氷柱』の形成を始め、ある程度の大きさになってから、スコットへアイコンタクトを送った。スコットが静かに通りへおどり出ると、ネイサンもそれに続いた。
まず、スコットは弱い『かまいたち』で敵の注意をひきつけた。誘いに乗ったゴーレムが向かってくると、全力の『かまいたち』をたて続けに撃ち放った。
ところが、敵は攻撃をものともせず、風を切って接近してきた。
「くそっ、
「もう十分だ! どけ、スコット!」
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