エーテルの怪物(前)
◆
絶対に逃がしはしないと、ウォルターはすぐに気持ちを切りかえた。
門が上がるのをのん気に待っている時間はない。ウォルターは数十メートルかけ戻って、
高さ三十メートル以上の
すかさず『
◆
大門をぬけて明るい場所へ出ると、スプーはネクロを馬にまたがらせながら、こう話を向けた。
「それで、どうだったんだ?」
「やっぱり、あいつが能力を使った瞬間にリンクは切れたよ。でも、ゾンビはあいつを襲ったんだろ?」
「ああ」
「だったら、リンクは切れても、命令までは解除されないってことだね」
今回、二人がレイヴンズヒルを訪れた最大の目的は、
ネクロの能力――〈
リンクの切断によってネクロの手を離れても、ゾンビは忠実に命令を実行した。つまり、ウォルターの能力は命令の解除にまでは効果をおよぼさない。彼らにとっては胸のつかえが下りる結果だ。
「私も
「それなら、『アレ』の運用に
『アレ』とは、彼らが近日実行に移す作戦の
大門前にかかる巨大な
まだ大門が開門する様子は見られず、スプーは安心しきっていた。先ほどまで
ところが、彼らが橋を渡り終える直前、行く手をさえぎるように、上空からウォルターが舞い下りた。
あ然としたスプーを、ウォルターはするどい目つきで見すえた。
「ハロー、トリックスター」
ネクロは
「ギル。あなた達がトレイシーを殺したんですね」
「そうだ。君のおかげで、その名はもう名乗れそうもないけどな」
「彼はスプーっていうんだ」
「よけいなことを言うな」
スプーは
「私が時間をかせぐ。その
「オッケー。でも、またお引っ越しか。まあ、
「私が相手になろう。見ての通り、後ろのやつは
スプーが身ぶりで開けた場所への移動を求めた。ネクロを警戒しながらも、ウォルターはそれに従った。数メートルの間隔をとって二人が
「ギル。あなたの目的は何ですか」
「逃がしてくれるなら答えてもいいが、そうもいかないんだろ?」
ウォルターは沈黙で応じた。
「断言しよう。トリックスター、君は我々に勝てない」
「それはあなたが決めることじゃない」
「もし勝ちたいのなら、『
ウォルターの表情がゆがんだ。トリックスターと呼ばれることにも、
スプーが
不意をつかれながらも、ウォルターの対応は
しかし、自身の魔法で視界をふさがれたウォルターに、たて続けに発動された『
ウォルターはバク
スプーは一歩も動けないまま、腹部に
(
スプーはあせりの色を隠せず、
ただ、同時にウォルターの甘さも見ぬいた。『かまいたち』でなく『
平和な時代に生まれ育った一高校生にとっては、
「認めよう。少々君を見くびっていたようだ。現状、我々の力は君に遠くおよばない。だがな、トリックスター。
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