ジェネラルVSギル(前)
◇
対抗戦は
出場者の応援のために来ている人が多く、観衆の入れかわりが激しい。その人数で実力や注目度が何となくわかる。
対抗戦の出場者はほぼ実力者。その両者が本気で
フィールド内での移動には
全体的に試合はスマートに決着した。対戦相手がセンターラインを越えてくれば、いさぎよく負けを認める。ただ、一試合だけ場外負けがあった。
「自分も魔導士をめざそうかな」
ロイが熱心に観戦しながらつぶやいたり、
「あの人、仲のいい
コートニーから出場者情報を得たり、
「知り合いはいないんですか? どっちを応援しますか?」
などとスージーに尋ねられたりしながら、僕らは大人しく観戦した。
ジェネラルの登場まであと二試合にせまると、目に見えて観衆が増えた。会場脇の席は全てうまり、立ち見の客がゾロゾロと出始めた。
いよいよ、ジェネラルの出番となると、会場の人出は
そして、ジェネラルがフィールドに進み出ただけで、会場がざわつき、建物の窓から身を乗りだす人まで現れた。当の本人は熱い視線を気にかける様子もなく、バックアップ役と
対戦相手のギルに視線を移す。気負っている様子はなく、
はからずもギルと目が合った。距離があったものの、こちらにしばらく目をとめて、かすかに口元をゆるめたように感じた。
◆
「始めてください!」
しかし、ジェネラルは自ら仕掛けるそぶりを見せない。
絶対的な自信からくる余裕の表れであり、これをおごりと評する人間もいるだろう。
先にギルが仕掛けた。手元から円状に噴きだした水が、徐々に
やがて、人間さえひと飲みにしそうな巨大な『水竜』が形成され、それがのたうち回るように術者の周囲をめぐり続けた。
「
スコットが言った。肩慣らしとも言える
ジェネラルは意表をつかれた。相手は〈
『水竜』が円をえがきながら牙をむく。ジェネラルは『氷』で補強した『水』の盾で迎え撃った。強固な盾に吸い込まれるように、『水竜』はなすすべもなく消滅した。
新たに発動されたひと回り小さな『水竜』が、立て続けに別方向から襲いかかる。ジェネラルは動じることなく、それも涼しい顔でいなした。
「ずいぶん派手な戦い方をするな」
スコットが冷ややかに言った。
「これは話にならないかも。はっきり言って
クレアはさらに
ギルは手を休めることなく、大技をくりだし続けた。ジェネラルが最小限の力で受け流す。その手さばきはギルのくりだす『水竜』の動きより
一見すれば、ジェネラルは防戦一方に追い込まれているが、これは攻勢に出ていると相手に
「一気に勝負がつくかもしれないぞ」
スコットが心からの
すでにギルの陣地はエーテルの
しかし、ジェネラルは勝負を決めに行かなかった。
一見手づまり状態に見えるギルが、
ギルが最後のあがきとも言える連続攻撃に打って出た。これまで同様、ジェネラルは軽快かつあざやかにさばいていく。
「もう決まったかな」
クレアがため息まじりにつぶやいた。もはや、ギルは
その矢先、目を疑うような出来事が起こった。
連続攻撃のドサクサにまぎれ、ギルが
大きなどよめきが起こった後、観衆は一様に言葉を失った。単なるジェネラルの不注意と考える者が多かったが、転倒した本人は
知らぬ間に、足もと周辺にうっすらと氷が張られていた。偶然の
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