中央広場事件(前)
◆
「まずは
第一の事件が起こったのは、〈樹海〉で起きた戦闘の二週間あまり後。まだ行方不明者の捜索が続いており、様々な噂が飛びかっている頃でした。先の案件を
第二の事件が起こったのはその翌日です。殺害されたのはベーコン卿と同じく、
その三日後に、中央広場での事件が起こりました」
そこでパトリックはひと息入れ、声のトーンを落として、再び語り始めた。
「第三の犠牲者は、当時元老院議長の地位にあったチェンバレン卿です。二件の暗殺事件がたて続けに発生した直後ということもあり、当日は多くの護衛が付き従っていました。それにも関わらず、
チェンバレン卿を乗せた馬車がレイヴン城を出て、ちょうど中央広場に差しかかった時です。突如として車内で
それに気づいた
けれど、護衛たちが取り囲んだ状態で車内を確認すると、中はもぬけの
護衛たちの証言によると、チェンバレン卿は『辺境伯が……、辺境伯が……』とうわ
◆
元老院の議長まで殺害され、レイヴン城は騒然となった。〈樹海〉で起きた事件との関連が、いよいよ
「辺境伯は〈樹海〉で戦死したのではないのか」
「辺境伯の
「まさか、元老院の議員を皆殺しにするつもりじゃないだろうな」
「落ち着いてください。チェンバレン卿は辺境伯の名を口にしたそうですが、その姿を見た者はおりません」
ジェネラルは議場に集めた議員たちに経緯を説明したが、それは逆効果となった。
「ならば、誰がチェンバレン卿を殺害したのだ。良心の
「殺害犯が目撃されていないほうが、なおのこと恐ろしい」
「ベーコン卿はともかく、チェンバレン卿は例の案件に積極的ではなかった。どうして、彼の命が奪われなければならないんだ」
〈樹海〉で戦死したメンバーの関係者による
「みなさんには
「
「いえ、私のところには……」
パトリックも他人事ではない。なぜなら、元老院の評議会には、毎回助言を行う参考人として出席し、今回の案件にも深く
しかも、この時点では〈樹海〉で何が起こったか聞かされておらず、悲観的な観測が広がっていたとはいえ、まだ辺境伯の死亡は確定していなかった。
「ジェネラル。
「今のところ変わりありません。〈
鎮座の間へ入室するためのキー――『
◆
翌日の昼すぎ。パトリックは
〈止り木〉の中へ入ること自体、パトリックには初めての経験だ。ランプを片手にうす暗いらせん階段をのぼった。階段には腕が通るくらいの
数百段におよぶ果てしない階段をのぼりきる。最上階には身を乗りだせるほどの窓があり、らせん階段とくらべれば、はるかに明るかった。
開かれた扉の前で、
「学長、お疲れ様です」
魔導士に
「どういった状況ですか?」
「ご覧の通り、扉がひとりでに開いたんですが、本当に突然開きました。俺たちは指一本ふれていなかったのに」
魔導士が鎮座の間を指さした。
「もうジェネラルは中にいます。あと、今年の頭に、ここへ議長に
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