デリックの蜂起(後)
◇
翌朝、
ふとテラスからの眺めに目を奪われた。サウスポートは
海を目にしたのは異世界に来てから初めて。大量の船がならぶ光景は
ピリピリとした空気の中、気を引きしめて耳をかたむける。説明は部隊の総指揮を務めるジャックが
「あの
丘は海からやや離れた場所にあり、上にこんもりと森をたくわえている。
よく考えると、こんな人の多い街で反乱が起こるなんて、とんでもない事態だ。しかも、敵は街のど真ん中に
「敵の数はどれくらいですか?」
「それほど多くありません。三十人以上、五十人未満といったところでしょうか」
「こちらの戦力は?」
「数の上では圧倒していますが、未熟な
パトリックに続き、クレアがこう質問した。
「敵は元水夫が中心だって話だけど、魔導士はいないの?」
「貴族が
デリック・ソーンの部屋で大量のマスケット銃を発見したのを思いだす。やはり、反乱のために準備されたものだったのか。
「
たった三度の
ジャックは頭を下げ、
「我々の作戦が
二日前に
「
たまらず、話が終わる前に隣りのパトリックに耳打ちした。
「おそらく」
パトリックが小声で応じた。敵方に女がいるのも、戦闘に協力しているのもまちがいない。気がかりは内通者の存在だ。
単純に敵の協力者がいるのかもしれないけど、もし味方になりすました敵がまぎれていたら、あいつ――ギルも敵方に加わっていることになる。
いや、待てよ。女は〈
「彼らの目的は何でしょうか。何か、要求みたいたものは?」
「それがわかりません。屋敷の
「ゾンビのような敵が現れたことは?」
「ゾンビですか……? いえ、そういったものは」
「わかりました。おそらく、我々が追っていた能力者が敵方にいます。いたずらに不安をあおるため、これまで
それから、パトリックが女の能力について説明した。能力の詳細はクレアですら聞かされていなかったようで、ほとんどの人間が息をつめながら、耳をかたむけていた。
瞬間移動・
「普通なら手に負えないと思うかもしれませんが、幸運にも、それらの能力は私とここにいるウォルターには通用しません。きっと事態は
もうあの女は恐れるに足らない――とまでは言いきれないけど、先日とっておきの
◇
ひと通り報告が終わり、休憩に入った。コートニーとスージーは別室で待機中だけど、ロイはパトリックの
「
ロイが質問した。自身が移動する場合は、その地点を見つめるという話だったけど、他人の場合はどうなのだろう。
「〈侵入者〉の証言によれば、さじ加減が難しいらしく、トランスポーターは毎回同じ場所に『
「それなら、丘の上から街をながめながら、あの辺りに送ろうだとか、適当なやり方はできないということですね?」
「まあ、おそらくは……」
「元の場所に戻すことは?」
「戻せるのは一人だけです」
「そうなると、敵の能力者は奇襲のために送り込んだ仲間を、回収に来ているかもしれませんね」
「おお、そうですね」
ロイの
「奇策を思いついたが、それには君の
「回収に来たところをたたくんですか?」
「いや、それは確実性が低い。敵もバカじゃないし、逃げられたら元も子もない。その役目は学長でもできるしな」
嫌な予感がしたものの、とりあえず、聞こうと思った。
「君が敵陣――つまり、丘の上の屋敷へ突入する。目には目を、奇襲には奇襲をだ」
空を飛んでいくということか。確かにできる。屋敷へ行くだけならわけもない。でも、銃で武装した敵が大量にいるところへ突っ込む……?
「マスケット銃は
これまで通りの戦い方では、いたずらに犠牲者を積み重ねるだけ。どこにいたって敵の弾丸は飛んでくるわけだし、そのぐらいの
「わかりました。やります」
「そうか、さすが僕の見込んだ男だ。学長に責任は負わせられません。自分の口から提案させてもらえませんか?」
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