ショッピング(後)
◇
「この店が私のお気に入り」
一通り見て回った後、ダイアンがそう言った店に入った。ダイアン行きつけの店だけあって店内は女性ものが中心だ。
「かわいい」
目を輝かせたスージーが、手に取った商品をながめながら、
「これなんかどうですか?」
スージーが自身の体の前に
「うん、似合ってる」
「そんな格好の人を街でよく見かけるな」
値段を聞いてみると、結構お手頃だったのでひと安心した。二人に二着ずつ買っても
「お金は大丈夫なの?」
「全く問題ないです」
コートニーの問いかけに胸を張って答える。
「じゃあ、僕の服も
「いいですよ」
冗談っぽく言ったロイにも、余裕の表情で応じる。
「だったらいいや」
こういう時に、そう言うのがロイの性格だ。
予定通り、スージーとコートニーが
日が落ちるのも遅いし、現実同様にこっちも真夏だ。けれど、うだるような暑さはない。冬の寒さはわからないけど、今から心配するのは気が早いか。
急いで帰る理由もないので近隣の店を見て回った。他の通りへも足をのばし、食器・
おまけに、通りのはずれで見つけた
◇
家に帰り着いた時は夕方になっていて、もう夕食の準備に取りかからないといけない時間だった。今日こそダイアンの手をわずらわせないと決めて、僕がベーカリーまで送った。
実際は三、四日ぶりだけど、久々に二人きりになった気がする。疲れていたので、おたがい言葉少なだった。
ふいに世間話が始まり、耳をかたむけながら、ポケットに忍ばせたプレゼントをいじる。ベーカリーが見えてきたところで、それの出番がやってきた。
「これ、今までのお礼にと思って」
そう言って、バラのような花をかたどったブローチを差しだした。ダイアンは僕の目を見つめ、うれしそうにしながらも、ちょっととまどい気味に受け取った。
「まだ、こんなものしか用意できないんだけど」
二週間近く面倒を見てもらったのだから、ブローチ程度で
「次はもっとスゴいものをプレゼントしてくれるのね」
その言葉にどう返事していいかわからず、笑ってごまかした。
◇
ダイアン
僕らの力だけで生活していく自信がついたものの、それはダイアンと会える機会が減ることを意味する。そうあるべきと頭でわかっていても寂しさを感じた。
食事の後片づけを終えて二階へ上がった。家のベッドはとにかく大きく、二階の半分以上を
「もう六時半は回ったのかな」
「もう回ってると思います。あと十分もないと思います」
常に時の鐘に耳をすますよう心がけているし、
僕らは川の字(一本多いけど)になって寝ている。二人の先輩が僕とスージーをはさむような位置関係だ。
いくらベッドが広いといっても、スージーは手の届く位置にいるし、コートニーの
幸いにも、なかば強制的に――あたかも
「時計がないと不便ですね」
ベッドに寝っころがったスージーが言った。
「そうだ。
「時計を一から作るんですか?」
「一から作る必要はない。仕組みを教えて作ってもらえばいいんだよ」
振り子時計の件はグッドアイデアだと思った。自らの手で一から製作することをつい考えがちだけど、個々の部品に目を向ければ、この世界に少なからず存在している。
これがロイの言った頭を使うということか。そう感心していたけど、次の日にロイがこんなことを言い出した。
「仕組みを完全に理解して、部品を作れる人物を探し当て
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