ショッピング(前)
◇
異世界における
日曜日なので急ぐ必要はなかったけど、普段と同じ時間に起きた。
「ウォルター、おはようございまーす!」
スージーは僕よりも早く起きていて、庭を散歩していた。ロイとコートニーはまだ寝ている。
「早いね」
「はい。九時前にこっちへ来ちゃいました」
スージーにとっては今日が二日目。まだまだ道を歩いているだけで楽しいのだろう。
自宅は一階も二階も十二畳ほどの広さ。もちろん、水道も電気もガスもない。水は近くの井戸へくみに行き、
ちょうど四人が座れるダイニングテーブルで、ダイアンが届けてくれたパンを、チーズや豆と一緒に食べた。
「この四人で朝食を食べるなんて不思議な気分だな。言うなれば、ここは文芸部の合宿所だな」
ロイが
「今日はどうするの?」
「予定は特にありません。
「私、街を心ゆくまで見て回りたいです」
「服でも買いに行ったらどうだ。君達の服は借り物だろ?」
すっかり忘れていた。正確には全員分ダイアンからの借り物だ。ロイの意見が採用され、服屋の場所を聞きにダイアンのところへ向かった。
「東南地区にもあるけど、中央広場の近くに服屋が集まる通りがあるの。そこが一番安くて品ぞろえもいいのよ。今日は休みだから一緒に行こうか?」
ダイアンの
「お姉ちゃん、マブいねえ。どこから来たの? 僕もお姉ちゃんの世界に連れて行ってよ」
ルーはコートニーに話しかけるのに夢中で、まだ僕に気づいていない。
「ウォルター、おもしろいお客さんです」
「ここではカラスがしゃべるの?」
「そのカラスだけですよ」
ルーはこちらに気づくなり、「チッ」と舌打ちというか、口で言った。
「おい、小僧。お嬢ちゃんのそばから離れたことだけは評価してやるよ」
そう吐き捨てるように言って、そそくさと飛び去った。
ルーが僕の前に姿を現したのは
◇
ダイアンと合流し、家の前の
大通りは丘の南端をそうように進み、レイヴンズヒルを東西に横断する
手持ちのお金はあるものの、服の相場がわからないので、行きがけにパトリックから軍資金を借りた。他人に甘えてばかりた。これではアシュリーの支援などと言っている場合ではない。どうにかしないと。
「見てください。大きな門があります」
右手にレイヴン城を見ながら三十分ほど進むと、
「あれはレイヴン城の正門よ」
「君は毎日見ているんじゃないのか?」
「いつも裏側を
城では大半の時間を
「正門付近は大物貴族が屋敷をかまえているから、行っても何もないからね」
大通りと交差する通称中央通りへ入る。ここは大通りに負けず劣らずの巨大な通りで、北に進むとレイヴン城の正門に、南に進むとロータリーのような広場に行き着く。
「ここが中央広場で、遠くに見えるのが
中央広場の名は二つの方向から記憶にきざみ込まれた。一つは中央広場事件の現場として、もう一つは
「例の絵画でえがかれていた場所だよな?」
「そうです。あの塔にも見おぼえがあります」
広場の中央にそびえる塔は五十メート近い高さがある。相当古いものらしく、きざまれた文字は
広場からは放射状に複数の通りがのび、多くの馬車や人が行きかって四方八方へ散っていく。中央通りの果てに巨大な大門を望むことができるけど、ここからではミニチュア同然だ。
中央通りからはずれ、小さな通りに入ったところが目的地だった。ファッション街というより問屋街といった感じで、
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