謎の能力(後)
◇
朝食を済ませてから、
「スゴいですね。夢みたいです」
「実際、夢みたいなものだけどな」
ロイが何かと話題にしていたので、 二人は異世界のことをだいたい把握していたけど、やはり目の前にするとわけが違うようだ。コートニーも街なみに見とれて、言葉を失っていた。
「
二人の能力を確認すると、こんな内容だった。
能力『
説明『
制限『対象との接触が必要。有機物にかぎり、瞳の
能力『
説明『リンクを確立した対象と距離・
制限『リンクの
僕が実験台となり、まずはコートニーの
「どうやって使うかわからないんだけど」
「たぶん、『見えろ』とか考えれば見えるよ」
ロイの適当なアドバイスで十分だった。
「あっ、見えた」
僕の瞳を見つめたコートニーがつぶやいた。
「『性別:男』、『年齢:17』、『種族:人間』。それだけね」
「簡易情報ならそんなものか」
「詳細情報は体にふれればいいんでしたっけ?」
コートニーが僕の
「身長と体重と……、『能力:
「変なことって何ですか?」
「『能力:?
「アクセス権限がない……」
それだけではわけがわからないので、ロイに使用してくらべることにした。
「身長と体重は
「興味ないから安心して」
二人は長い付き合いだけど、仲が良いのか悪いのかわからない。ヒヤリとするやり取りをするし、わざわざ僕やスージーを
「『能力:
「ここへ来る前に君にかけられたアレか。現実での名前なのがミソだな」
念のため、スージーにも使用すると、ロイと同様の結果だった。
「要は、他人からかけられた能力ってところか。つまり、ウォルターは正体不明の能力を四つもかけられているわけか」
「心当たりはあるの?」
「全く身におぼえがありません」
うすら寒い思いだった。異世界へ来るようになったことと関係がありそうだ。仮にそうだとしても、四つは多すぎないだろうか。
「私の能力も試してみましょう」
次はスージーの能力を試す。聞くかぎりでは、携帯電話みたいな能力だ。
「何も起きません」
コートニー相手に使おうとするも失敗に終わる。リンクを確立した対象と『交信』できるそうだけど、その方法がわからなかった。
「おたがいに口で言ってみたらどうかな?」
「リンクを確立しましょう」
それにコートニーが同意すると、『リンクを確立しますか?』とのメッセージが表示されたようだ。さらに、確立後の表示をスージーがこう説明した。
「ここら辺にコートニーの名前が表示されて、右側に『解除』っていうボタンがあります」
「そんな感じの操作パネルなら、僕のにもあるぞ。複数の物を『
いよいよ
「もしもし?」
スージーが声に出した。
「口に出したら意味ないだろ」
ロイがすかさずツッコんだ。その後、息がつまるような沈黙が続いた。
「できました! 心の中で話せました」
「心に思ってることまで、
ふと気になったので質問した。心の声が全てまる
「相手に話そうと思わなければ、大丈夫みたい」
◇
パトリックの屋敷に到着した。二人とその能力のことを説明すると、パトリックはコートニーの
「私にも使用してみてください」
「――ウォルターと同じで、アクセス権限のないものが三つあります」
「ウォルターは四つじゃなかったか?」
数の違いはあれど仲間ができた。パトリックのほうに共通点が多いのが謎だ。
「そうですか。一つだけなら心当たりがあるのですが……」
「ちなみに、それは何ですか?」
「自分で自分にかけている『
自身に対する信頼と信念がスゴい。見習いたいと思った。
パトリックは二人の
始業時間がせまってきたので、結論を聞くことなく、
「お城へ行くんですか?」
スージーがうらやましがった。
「お城と言っても、
「やたらに城壁が高いしな」
「連絡用にスージーとリンクをつないでおいたらどう?」
コートニーの提案に乗り、リンクをつないだ後にレイヴン城へ出発した。
◇
「今、三人で街を散策しています」
「ロイがお使いを頼まれて、一人で出かけました」
「ダイアンと一緒に買い物へ行くことになりました」
そんな感じで、スージーが事あるごとに
パンの配達を終えたダイアンが昼すぎに顔を見せ、食材の買い出し場所を案内してくれた上に、調理方法のメモまで用意してくれたらしい。
できるだけ、スージーの『交信』には返答していた。思わず笑みがこぼれるようなことを言ってくるので、スコットやケイトから、たびたびあやしまれた。
あと、コートニーの
◇
終業後にパトリックの屋敷へ寄った。ロイ達は先に帰っていて、ダイアンと一緒に夕食を作っていると報告があった。
コートニーとスージーの処遇は、まだ結論が出ていなかった。けれど、パトリックはこんなことを言っていた。
「コートニーをアカデミーに入れられないかと考えています」
またもや危ない橋を渡ろうとしていた。まあ、
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