外世界研究会(後)
◇
「この国には剣とか槍とか、そういう武器はないんですか?」
前から疑問に思っていた。見張りに立つ
「古い物ならあるのですが、現在は製造も所持も禁止されています。
確かに、接近戦ならまだしも、剣や槍では魔法に
「僕らの世界より未来をいっていますね。……いや、
ロイがひとり
「武器や防具がどうかしましたか?」
「空を飛んでいる時、両手がガラ
「機会があったら探しておきましょう。ただ、先ほど言った通り、いつも身に着けるのは無理ですよ」
「〈侵入者〉はどんな武器を使うんですか? 魔法ですか?」
「魔法は使いません。それは我々の特権ですから。アレをお見せしましょう」
部屋を出て行ったパトリックが、銃をたずさえて戻ってきた。
「これは
ロイと一緒に観察する。アンティークで結構かっこいい。黒ずんだ
「
現実に戻ってから調べてみると、フリントロック式と呼ばれる火縄銃の改良版だった。
「これは使えるんですか?」
「おそらく使えますが、
「このレベルの銃があるのなら、
火縄銃と同じく
でも、火や風の魔法で弾丸を迎撃するのは、難しいかもしれない。やっぱり、重力操作でどうにかすべきか。
いや、それもダメか。十メートル程度では弾丸が
「ところで、〈外の世界〉とはどんなところですか?」
「どうも記憶がはっきりしないので、
「この国が『転覆』する前のことを、どのくらいおぼえているんですか?」
「おぼろげにおぼえていますが、
この国を『転覆』させたのは、巫女と確定したわけじゃないのか。でも、巫女は『転覆の魔法』を使うそうだし、
「この国とあまり変わらない認識でいいですか?」
「いえ、人間が
「聞いたことある種族ばかりだな」
「あなた方の世界にもいらっしゃいますか?」
「広く知られていますが物語の中での話です。実際にはいません」
これまで出会った異質なものはゾンビと魔法ぐらいだけど、ファンタジーで
「やっぱり、この世界をつくったのは僕達の世界の人ですよ」
「君じゃないのか? よくそういう小説を読んでいるじゃないか」
そんな気がしなくもない。ここで話題を変えた。
「そういえば、今日ジェネラルが直接会いに来て、
「……ジェネラルがですか? ただちに
パトリックがドン引きするくらいの勢いで飛びついた。
「私も
言葉通りに受け取れない。もう裏があると勘ぐってしまう体になった。
「士官になれば、役職につけますし、士官手当ても出ます」
「ウォルター、ぜひ受けたまえ」
ロイがすかさず
「もっと
「なおのこと良いじゃないか!」
「それは遠慮します。ようやく仕事をおぼえたところですから。それに、今はいそがしいので、みんなに迷惑かけられませんし」
「それはそれでかまいません。士官に昇格することと関係ありませんから」
ロイが僕の肩にポンと手を置いた。視線で
「何かデメリットはないんですか?」
「試合でマッチアップされる相手が士官になるくらいです。ひと口に士官といっても、相当数の人間がいますから、実力にも
そのぐらいは甘んじて受けなければならない。考えはかたまった。士官昇格の話は受けるけど、当面は〈資料室〉に残る。
その意思をパトリックに伝えた。ロイがあからさまに不満げな表情を見せたけど、
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