残された器
◆
ダイアンは同地区の住民たちと共に、レイヴン城の
部屋は息苦しさをおぼえるほどで、まさにすし詰めの状態。部屋がそんな状況にも関わらず、廊下にも人があふれていた。
とはいえ、周囲にいるのは、
中庭に面した窓から外をながめていると、空から一羽のカラスが急降下してきて、中庭の
一羽のカラス――ルーは
自分をさがしているのだと思い、ダイアンは手を振って合図を送った。しかし、ルーはなかなか気づかなかった。
用もなく部屋から出るなと、役人からキツく言われていたが、仕方なく中庭まで行くことにした。
「ルーちゃん」
「お
「何かあったの?」
「岩の巨人という呼び名は
「えっ!? ジェネラルがいるから大丈夫なんじゃなかったの?」
ルーは昨日の夕方にもここへ報告に来ていた。
「そう言っているのを
「ああ、そう……」
ダイアンが冷たいまなざしを向けた。
「ウォルターは?」
「あの
ダイアンが心配そうに考え込む。
「そんなに気になるなら、様子を見に行ってきてやるよ。あいつは要注意人物だからな」
「そういう意味じゃなくて……」
「それじゃあ、いつでもここから逃げられるよう、お嬢ちゃんも準備しておけよ」
「気をつけてねー!」
◆
スプーが乗り捨てた『
まもなく内門は下ろされたが、すでにおびただしい数のゴーレムが市街へ侵入した。市街の外にいるのは、始めから
「こちらです」
「こいつです」
「元気いっぱいね」
クレアは顔をしかめ、コートニーは危険を感じて、思わず身を隠した。不審者が
「ずっとこんな感じです」
「おい、おとなしくしろ!」
取り押さえられてから十分は経過していたが、不審者は抵抗をあきらめようとせず、全力で体を左右にゆらしていた。それでいて、
「見てください。こいつとそこの死体は同じ顔をしているんです」
クレアとコートニーがアイコンタクトをかわす。コートニーが恐る恐る近くでかがむと、不審者はうろんな目つきで彼女を見た。
コートニーは相手に手を当て
『能力:
目ぼしい情報はかけられた能力の表示と、ゾンビであることだけだ。
「どうだった?」
「ゾンビです。あと、
「じゃあ、暴れているほうが
次に死体の『
「向こうは死亡と書かれているだけで、ゾンビではありません」
『忘れやすい人々』――ゾンビ化する一部の平民と違い、貴族は死亡してもゾンビになることはない。いわゆる
普通のゾンビとの違いに足が速いというものがあるが、それは体が健康な状態であることと、ネクロが何らかの命令を与えていることに
◆
またもや敵にしてやられた。
ふと窓の外へ目を戻すと、中央通りを一人でうろつく女の魔導士が目にとまった。ビクビクとゴーレムを警戒しながら、脇道に入ったり出たりしている。
「あいつ、あんなところで何やってんだ」
「ちょっと外に出てくるって、クレアに伝えておいてくれ」
スコットは居ても立ってもいられず、近くの魔導士に伝言を頼んでから、急いでケイトのもとへ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます