訪問者(前)
◆
男は
男は二日前にもここへ足を運んだが、あいにく
「面会を申し入れた、ギル・プレスコットだ」
使用人に対し、低音のシブい声で
玄関まで出迎えたパトリックが、ギルを居間へ招き入れた。ギルに『
パトリックは学術関係の人物と広く交流を持ち、
「
スプーが
パトリックは
遠慮がちに腰を落としたスプーが、久しぶりにレイヴンズヒルを訪れたことや、街なみの移り変わりについてツラツラと感想を述べた。
「申し遅れました。ギル・プレスコットと申します」
「うかがっております」
どこかで会ったおぼえが――。パトリックが過去の記憶をたぐり寄せる。すると、ふと
「さっそくで
パトリックは
怖いもの見たさからくる好奇心と冒険心。五年前、〈樹海〉において発生した
レイヴンズヒルにおいては、自身の〈
「私にも熱心に調べていた時期がありましたが、信頼に足る目撃情報はゼロに等しく、現在は存在について否定的な見解を持っています」
「先だってのキース・コールマンの一件についてはどうでしょうか? 『樹海の魔女』の関与を疑う意見が
「人をまどわす魔力のようなものが、〈樹海〉に働いていることは
「おっしゃる通りです。『樹海の魔女』も旅をすることがあるかもしれませんが」
「話は変わりますが、学長はウォルターという男をご存じですか?」
パトリックの顔色が変わった。スプーはかすかな感情の乱れも見のがさなかった。ウォルターとパトリックの関係性を確かめる。今回の訪問の
「ええ……、ウォルターは私の親しい友人です」
スプーが肌にまとわりつくような視線を投じる。パトリックは
この男と二人きりでいるのは危険。本能が警告した。助けを求めるように部屋を見回す。あいにく、ロイとスージーは外出中。レイヴン城にいるウォルターの
幸いにも、スージーの
〈
「彼をご存じなのですか?」
動揺をひた隠しにし、場をつなぐために話を向けた。
「ええ。実はキース・コールマンの一件で彼と行動を共にしまして」
「そうでしたか。それで『樹海の魔女』にも興味がおありでしたか」
疑問は
「学長は、私のことをご存じありませんか?」
そう言い終えたスプーが、
しかし、パトリックはそれに疑問を感じない。なぜなら、彼の目に映るスプーの外見は、始めからギルのものでなく、『
それに対するスプーの動揺もない。自身の能力が通用しないのは想定内。その確証を得ることが、この屋敷を訪れたもう一つの理由だった。
「申しわけありません。以前にお会いしたことがありますか?」
「いえ、こちらが一方的にお見かけしただけです。今日はお時間を取らせました。また、お話をうかがえる機会があれば
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