催眠テスト(後)
◆
「とにかく『樹海の魔女』について調べたいので協力してください」
「いやにこだわりますね」
「
ウォルターの巫女に対する
〈
なぜ、〈
「中央広場事件と関わっているからですか?」
パトリックの非協力的な態度に
「誰の入れ知恵ですか? それを教えてくださったら、そのことについて話しましょう。あくまで教えられる範囲内のことですが」
「名前は知らないんですけど、この間の会合で大声を上げた背の高い人です」
「わかりました。彼ですね」
パトリックはうんざりした様子で頭を振った。
「
パトリックはそこで息を入れてから、こう続けた。
「あれは五年ほど前の出来事です。当時、我々は〈侵入者〉の
ウォルターはゾッとして息をのんだ。この平和な国に似つかわしくない内容に、これまで〈侵入者〉にいだいていたイメージが、瞬時にくつがえった。
「中央広場事件が起きたのはほとぼりが冷めた数週間後。
ジェネラルに勝るとも劣らないと呼び声高かった彼は、〈樹海〉において戦死したと思われていました。しかし、このレイヴンズヒルに突如姿を現し、
「例の男は
「これより先は機密のため、話すことはできません。しかし、私は彼を売り渡したつもりはありませんし、彼が犯人であったと確信しています」
パトリックは
「以前話したトランスポーターは、〈侵入者〉を送り込む際に、好んで〈樹海〉を用います。単に
これは私の
仮説には説得力があった。やっとつかんだ手がかりが根元から
「我々にとって、先の事件はあまりに衝撃的でした。敵が〈樹海〉の外へ出てこないのなら、あえてリスクをおかす必要はない。〈樹海〉および〈侵入者〉とは一切関係を持たない。それが事件後に出した我々の方針です。
そういうわけですから、『樹海の魔女』について調べるのは控えてください。あなたに表だって行動されると、私の体面にも関わります」
「わかりました」
ウォルターは
ウォルターの疑念は解決を見た。けれど、パトリックのそれは別だ。話をしている最中、彼の頭に妙案がひらめいていた。
「ウォルターは別の世界から来たと、以前言っていましたよね?」
「はい」
「その世界から他の方を連れて来られませんか? ウォルターの様な協力者が他にいてくれれば心強いですし、能力者ならば、なお幸いです」
「他の人をですか?」
ウォルターが渋い顔を見せた。自身がどういった手段でここへ来ているかもはっきりしない。この世界自体、自身の心の中に存在するものと考えていた。
なぜパトリックはこの話を持ちかけたのか。それはトランスポーターがかかえる能力的制限に関連している。トランスポーターが有する
この情報は以前
仮にウォルターが〈侵入者〉ならば、新たな人物を連れてくるのは現実的でない。本人はまちがいなく
「無理かもしれませんけど、試してみます」
ところが、ウォルターからは前向きな発言が返ってきた。質問への反応で、正体を見きわめるつもりだっただけに、パトリックは困惑した。
「……何か当てがあるんですか?」
「当てというほどでもないんですけど、とにかく試してみますよ」
目をキョトンとさせたパトリックとは対照的に、ウォルターは楽天的だ。
(部屋のベッドで寝れば、誰でもこっちに来れたりしないだろうか)
ウォルターの頭にあったのは、自室のベッドが異世界の入口ではないかという、
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