事件への道(後)
◇
会議へ出席するため、僕らは塔を後にした。その途中、パトリックがこう話を切りだした。
「会議の前に、〈樹海〉で起きた戦闘と中央広場事件の
様々なところで耳にしたので、事件の結果については知っている。けれど、その過程については何も知らない。
「事件の
ゾンビ化を引き起こす三大原因というものがあります。レイヴンズヒルから距離が離れていること、人口密度が低いこと、当人が体力を
「〈侵入者〉が取引を持ちかけてきたのは、そんな状況下です。我々の足もとを見たと言ってもいいかもしれません。結果的に、それが事件を引き起こしたわけですが、私はベーコン卿を責める気にはなれません。きっと、ワラにもすがる思いだったのでしょう。現に、ベーコン卿は
◇
宮殿の二階にある
議場は明かり取りの窓しかないため、全体的に暗く、中央に位置する六角形のテーブルのみが、闇にうかび上がるように照らし上げられていた。
奥の一段高くなった場所には、色あざやかな模様の
テーブルの奥側には元老院の議員達が顔をそろえ、手前側にはジェネラルを始めとした、マントを身にまとったユニバーシティ幹部が座をしめていた。
元老院は五つ――火・氷・水・雷・風の一族から各三名が選出され、計十五名で構成される。議員は一年を通してレイヴンズヒルにとどまらなければならない。
主な役割は月に一度開かれる
テーブルに案内されると、思わず目を丸くした。ジェネラルやクレアにまじって、チーフの姿を見つけたからだ。そういえば、チーフは〈樹海〉の戦闘の生き残りだった。
「本日は、私のためにこのような場をもうけていただき、心より
パトリックが
「
静かに耳を傾けていた出席者が、にわかにざわつきだした。
「ベーコン卿のもとに取引が持ち込まれたのが六年前の冬です。ちなみに、
ベーコン卿から元老院に上申されたのは数カ月後の春のことです。それから数カ月間に渡り、議論に議論を重ねた結果、〈侵入者〉との交渉に応じる決定を下しました。
そして、その年の秋にあの事件が起こりました。現場に残った九名――交渉役のイェーツ卿とその
議場が重苦しい空気につつまれた。うつむき加減でひと息ついたパトリックが、視線をチーフに向けた。
「あの日〈樹海〉において何が起こり、そして、なぜ
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