お泊まり会(後)
◇
とりあえず、先日の行動をなぞることになった。なぞると言っても、ヒマをつぶすだけだけど。やっぱり時間的に早すぎるのだろう。
ベッドへ横になった
僕と
何度か思い出したようににらめっこを再開してみたけど、思ったような展開にはならなかった。
八時半に食事をとった。持ち寄ったお菓子を食べただけなので、食事というよりおやつだ。
「
「そうだ。向こうでは太田くんがかせぎ
「えっ、家も持ってるんですか?」
「ローンがたんまり残っているけどな。お
食事中、土井先輩と辻さんは異世界の会話をずっとしていた。例によって、自分は会話に参加できない。まさしく、うんともすんとも言えない。
小谷先輩は話半分に聞いていた。幼い子供同士の話を聞く感じで。まだ信用できていないのだろう。ただ、一度だけ質問をした。
「向こうの食事はどんな感じなの?」
「私も聞きたいです」
「太田くんがパン屋に居候してたこともあるが、基本パンとスープだ。スープは豆と野菜しか入っていなくて、見た目はパッとしない。だけど、スパイスがきいていて味はいいよ。もちろん、肉や魚が向こうにないわけじゃないぞ」
夢のある話ではないので、辻さんの反応もにぶかった。
実際、ダイアン
◇
そうこうしているうちに、時刻は九時半を回った。
マンネリ感で沈黙につつまれがちになり、テレビの音だけがむなしく部屋にひびいている。このままだと、文芸部のお泊まり会で終わってしまう。
「何か忘れてないか?」
土井先輩に投げかけられた言葉でハッとなった。この間は、直前に引きだしをのぞいていたのを思いだした。さっそく引きだしを開けた。
「おい、何だそれは!」
すると、土井先輩が
「見えるんですか?」
土井先輩が目を丸くしながらうなずいた。この前とは正反対の反応だ。異世界へ行ったことで視認できるようになったのだろうか。
そのやり取りを見た辻さん、少し遅れて、小谷先輩も様子を見に集まって来た。
「君達にも見えるか?」
しばらく引きだしに目を落とした小谷先輩が、おもむろにそこへ手をのばした。
「これぐらいしか目につかないけど?」
「それは関係ありません」
取りだされたUSBメモリを、僕は
「それに何が入っているのか、だんだん興味がわいてきたよ」
「すいません。二人ともベッドのほうへ行ってもらえますか」
別に恥ずかしいものではない。でも、やっぱり見られたら恥ずかしいので、話をはぐらかした。
引きだしに顔を近づけた。
「見えた……」
そうつぶやきながら、反射的に立ち上がった。うかび上がった文字を
「僕の時と一緒か?」
「与えられる能力が違います。小谷先輩は
「
「何かあったんですね!」
「どういうことになってるのか、説明してくれる?」
辻さんは手に汗にぎり、小谷先輩は
「よく聞いてください。小谷先輩には
「異世界へ連れて行ってもらえるなら何でもします!」
「内容によるけど……」
辻さんは危なっかしいほど無防備だ。
「たいしたことじゃありません。一緒に異世界へ行って、僕に協力してください」
「わかりました!」
辻さんは話をかぶせるように即答した。
「その内容なら……」
小谷先輩も同意したけど、どう対応したらいいか困っている感じだ。
『契約が成立しました。本当によろしいですか?』
目の前の表示が切りかわって、心の中でうなずいた。その矢先、この前と同じ光の粒を
「目を閉じてください。これから光ります」
とっさに注意をうながした。まぶたを閉じてもわかる
「何なんですか、今の!?」
「来るとわかっていてもスゴいな」
光がおさまった時、心臓付近にするどい痛みが走った。土井先輩の時と同じだ。いや、その時より数段強かった。偶然とは思えない。能力の使いすぎを
「さあ、あとは寝るだけだな」
土井先輩がそそくさと布団の用意を始めた。僕は心臓に走った痛みが気になり、ボーッとそれを見守った。
「もう異世界へ行けるんですか?」
「おそらくな。少なくとも、僕の時はそうだったよ」
「先輩、異世界へ行けるそうです!」
辻さんが小谷先輩の両手をとって喜びにわいた。小谷先輩はさっきの発光現象のショックからか、あ然と部屋を見回している。
「そういえば、向こうに着いた時、僕は上半身裸だったよな?」
「自分もそうでした」
土井先輩が
「少し用意があるから、僕らは先に行くよ。二人は五分ぐらいたってから、横になってくれ」
「私、そんなに寝つきが良くないんだけど?」
「大丈夫、大丈夫。寝ようと思えばあっという間さ」
土井先輩はいい加減な返事で済ませ、部屋の電気を消そうとした。
「よし、異世界合宿の始まりだ」
「楽しみですね」
暗闇につつまれた部屋に、辻さんの
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