決戦前夜(後)
◆
敵の総攻撃を
『
パトリックは助手としてコートニーを従えている。上申の内容に
〈止り木〉の頂上――
ジェネラルが『
おとろえを知らない
ジェネラルたちは宝珠と
「どうやら、台座と
パトリックが宝珠に歩み寄っていき、コートニーもそれに続いた。そばにしゃがみ込んで確認すると、宝珠は台座にうめ込まれ、すき間なくピッタリとハマっていた。
立ち上がったパトリックは軽くため息をつき、もの言いたげにコートニーを横目で見た。意図を察したコートニーがさり気なく宝珠に手を当て、
あの日の
「この場から動かすのは無理でしょう」
「そうですね」
ジェネラルが
「市民の命を最優先に考えるなら、この宝珠を敵方に差し出すことも考えなければなりません。そのことについて、ジェネラルはどう思われますか?」
「口に出すのも恐れ多いことですから、
パトリックがコートニーに話を向けたのは〈止り木〉を下りた後だった。
「何か、わかりましたか?」
「ええ……」
コートニーはそう答えた後、しばらく口ごもった。
「『能力を展開中』と表示されていました。能力名は
「
それははるか昔から予想していた。『
そのため、おどろきはなかった。ただ、それだけではない。コートニーの表情がそう言っていた。
「続きがあるのですね?」
「はい……。その下に『解除の
パトリックは息をのんで、言葉が
「……誰から誰にですか?」
「巫女から――トリックスターに」
それも予想の
パトリックは興奮をおさえられなかった。この国にかけられた『転覆の魔法』を解く道が、ついに開かれたからだ。
「ウォルターにはこのことを秘密にしていただけますか? よけいなことで心配をかけたくないのです」
「……わかりました」
コートニーはとまどい気味に応じた。
◇
岩の巨人の到着は早ければ今日の夜中。
それに加え、東南地区へ
戦いが始まる前に、大門を見に行こうと思い立った。対抗戦の日や、サウスポートへの行き帰りの時に通ったけど、門の構造をしっかり
そこへ向かう途中、住民たちの行列と行き会った。レイヴン城の正門から、
「東南地区の住民は
「食料と衣服以外の持ち込みは
門前の
偶然、行列の中にダイアンの姿を見つけた。
「ダイアン!」
人ごみをかき分けながら、手をあげて呼びかけた。こちらに気づいたダイアンが列からはずれる。
僕らは手を取り合った。笑っていられる状況じゃないけど、自然と頬がゆるんだ。
「気をつけてね」
心配そうに言ったダイアンの両手を、つつみ込むようにそっとにぎる。前にプレゼントしたブローチが、胸元に輝いているのが目にとまった。
「大丈夫。きっと守る――この街はきっと守るから」
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