休日の昼下がり
◇
文芸部のメンバーが異世界に
パトリックの希望が通り、コートニーがアカデミーの研究員
服装はユニバーシティの制服ではなく、パトリックのものとよく似た黒一色のローブ。てっぺんに四角い板のついた帽子も支給されていたけど、二日目からはかぶらなくなった。
城内で顔を合わせることはほとんどない。基本的にパトリックと行動を共にし、
一方のロイとスージーは、週の大半をメイフィールドで過ごした。現在、小麦の収穫作業に
スージーの希望もあって、休日の今日は
村人達は休み
実は新技を開発した。それは
週の始めにやっと本物の指輪が手に入り、仕事の
そのかいあって、
重力は十分の一程度にとどめるのがコツだ。完全に無効化すると、勢いあまって空中で回転してしまう。
十メートル程度なら、ためらうことなく飛べるようになったけど、
「ウォルターの能力は空も飛べるんですか?」
「能力と魔法を組み合わせなければ、制御できないけどね」
スージーが
「ウォルターがうらやましいです。私の能力は携帯電話みたいなものじゃないですか」
「いや、この世界に携帯電話があれば、たちまち
ロイが
ロイは
ただ、ロイは目玉焼きの作成をマスターしている。
手順は簡単。タマゴと火を『
けれど、ロイはこういった能力の使い方を心良く思っていない。
「目玉焼きを作ってください」
「僕は自動目玉焼き作り機じゃないから」
最近は、スージーから頼まれても、こんな感じでかたくなに拒否している。
◇
屋敷前に戻って、作業を手伝いながらアシュリーや村人達と歓談した。
その
「今はみんなとメイフィールドにいます」
スージーの
「
◇
三十分後、馬車をかったパトリックが姿を見せた。微笑をうかべながらも、きびしい表情をしていたので、思わしくない事態の発生を予感させた。
パトリックはアシュリーとあいさつをかわした後、僕らを離れた場所まで連れて行って、深刻そうに切り出した。
「実は
「何が起きたんですか?」
「さしあたっては、魔導士が一人行方不明になっただけですが……」
それだけではないと言いたげな表情だ。
「応援要請を受け、
パトリックの提案に一同口をつぐんだ。気楽な旅行という雰囲気ではないし、全員となると、うかつに返答できない。
「別に、危険なことをさせるわけではありませんから、安心してください。以前ウォルターは、この国を見て回りたいとおっしゃってましたよね。向かう予定のストロングホールドは、レイヴンズヒルに次ぐ第二の都市ですから、
「じゃあ、旅行みたいなものなんですね」
スージーがホッとした様子を見せる。個人的にも魅力を感じたけど、それだけの理由で僕らを連れて行こうとするとは思えない。
「本当にそれだけですか?」
「場合によっては、ウォルターには危険な役割をになってもらうかもしれません」
パトリックが改まった調子で言うと、再び場の空気が引きしまった。予想がついていたのでおどろきはない。
「『樹海の魔女』というやつですか?」
「魔女とは思っていませんが、
パトリックの表情が一段とけわしくなった。以前、『樹海の魔女』は単なる
でも、〈侵入者〉が相手だとすると反応がオーバーだと思った。人数がかぎられているせいか、この国の人達は〈侵入者〉に対する危機意識が低い。
「それとコートニーにもやってもらいたいことがあります」
パトリックがコートニーに歩み寄っていく。
「あなたの
ゾンビという単語を聞くと、スージーがかすかに身をふるわせる。
「わかりました」
ところが、当のコートニーはほとんど動揺を見せずに承諾した。
こうして、明日ストロングホールドへ出発することが決まった。
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