旅の途上で(前)
◇
出発は明日の正午と正式に決まった。ロイは今回の計画を『ゾンビ
「アシュリーの支援を具体化させるために、今回の計画を
ストロングホールドが工業都市と知り、ロイは
「では、言いだしっぺの自分から。ストロングホールドは
「私とウォルターは自由に行動できないみたいだから、できることはかぎられそうだけど」
僕とコートニーはゾンビ対処の手伝いをする予定だ。行方不明者の捜索にともない、人手不足におちいった部署の応援にかり出された格好だ。
パトリックはストロングホールドにとどまって指揮をとるらしい。ロイとスージーは自由行動だけど、スージーについては、僕らとパトリックをつなぐ連絡役を務める。
「とはいえ、ゾンビ化は人口減少の
言われてみれば、ゾンビ化の解決は間接的にアシュリーの支援になるのか。ただ、その要因が
「コートニーはゾンビ平気なんですか?」
「平気じゃないけど……。ウォルターは遭遇したことがあるんだっけ?」
「二回あります。見た目はグロテスクですけど、走れば簡単に逃げきれそうですし、がむしゃらに襲いかかって来るようなことはないですよ」
「ゾンビって私達が行く街にもうろついてるんですか?」
「ストロングホールドはたまに出るらしい。でも、年に二、三件あるかどうかで、やっぱり、人口の多い場所は
顔をこわばらせたスージーが「二、三件……」と言葉を失った。
「ウォルター。アシュリーの支援であれこれ策をめぐらしてみたが、小麦の品種改良は手にあまるし、土地の改良は十年単位で取り組まないといけない。ジャガイモのような、この国に存在しない作物を
ロイは真剣に取り組んでくれているようで、ありがたいというか、申しわけなさすら感じる。
僕自身は
「そこで直接的な支援――つまり、ベレスフォード卿と
「具体的にどうするんですか?」
「君は魔導士として名を上げて権力を手にする。僕は商人として成り上がって財力を手にする。これが最もわかりやすく、一番手っとり早い方法だ」
確かに、単純明快でわかりやすいけど、途方もないと思った。ただ、ロイの意見を受け入れざるを得ない。前々から、ベレスフォード卿に対抗するため、地位や権力を手に入れる必要性を感じていた。
これまでジェネラルを雲の上の存在と考えてきた。けれど、実力主義をうたうユニバーシティならば、手の届かないものではない。今は本気でその座をねらうことを考えている。
「そのことを頭に入れ、今回の計画もそちらへ
「わかりました」
「アシュリーのためなら私も協力します!」
できるできないではない。やらなければいけないんだ。頼もしい仲間がたくさんできたのだから、甘えたことは言ってられない。
絶対にアシュリーを――メイフィールドを守ろうと心にちかった。
◇
明くる日、出発前に〈資料室〉へ顔を出して、しばらくストロングホールドへ行くことを報告した。
「ウォルターから声がかかったか。実は、いつでも出発できるようにって、俺にも
「もしかして、私にも来るんでしょうか……」
そう言ったケイトはひどく心配していた。
◇
パトリックの屋敷に集まり、僕らは同じ馬車に乗り込んだ。パトリックは他の同行者と一緒に、別の馬車に分かれて乗った。
手ぜまとはいえ屋根付きの立派な馬車で、何と乗客と同数の四頭引きだ。
天然の
本来なら二日で到着できる距離だけど、早寝遅起きの僕らに配慮してもらい、通常より余裕のあるスケジュールとなった。
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