対抗戦開幕(後)
◇
「よお、ウォルター。今日の調子はどうだ?」
ふいに現れたスコットが肩に腕を回してきた。初めての試合の時と同様、スコットにはバックアップを頼んである。
「やっほー」
それに続いて、クレアも姿を見せた。
「クレアは対抗戦に出るの?」
「ううん、今回はパス」
「めずらしいな」
「個人的には出たかったんだけど、誰からも試合を申し込まれなかったから。
「ジェネラルの相手のギル・プレスコットって、聞いたことない名前だな」
「
早とちりだった。とはいえ、自分もつい先日ジェネラルの
「明らかにミスマッチじゃないか。事務局は何を考えてるんだ?」
「そうじゃないみたいよ」
クレアが横から口をはさんだ。
「ジェネラルから聞いたんだけど、相手から希望してきたそうよ。ジェネラルに試合を申し込むのなんて私ぐらいなものでしょ? だから、すんなり決まったみたい」
最近のジェネラルは敵なしの状態で、負けるとわかっている相手に、あえて試合を挑む人間はパッタリいなくなったそうだ。
「自分でそれを言うか。まあ、段階をふむべきだと思うが、挑戦すること自体は悪くないよな。俺も一度ジェネラルに試合を申し込んでみようかな」
ジェネラルの話題に
にわかに、会場がさわがしくなる。注目を
「今日の試合、楽しみにしているよ」
「はい。ジェネラルもがんばってください」
圧倒的なオーラに当てられ、自然と背筋がのびた。ジェネラルはかすかに顔をほころばせてから立ち去った。
「よし、ウォルター。やってやろうじゃないか。今日から俺達の伝説が始まるんだ」
「私と戦うまでは負けないでよね」
期待が重い。いよいよ、負けるに負けられない状況になってきた。勝って当たり前という雰囲気だけど、相手が序列九位のトレイシーだということを、みんな忘れていないだろうか。
◇
「時間があるようなら、先に城を見て回りたいな」
「そうです、お城を見学しましょう!」
第一試合が始まるまでに三十分、ジェネラルの試合が始まるのは、そこからさらに二時間半。他の人の試合にも興味はあるけど、先にロイやスージーとの約束を果たすことにした。
試合会場の外も人が多い。普段なら絶対に見かけない中高年の夫婦を
それもそのはず、今夜
僕とコートニーのオフィスが入る
「正面に見えるのが宮殿です」
正門から宮殿の
東棟や西棟と違って、宮殿は華やかの一言。複雑な左右対称の設計と美しい白い壁が印象的だ。こちらの世界ではめずらしく、窓にガラスが使われ、それが太陽光を反射して光り輝いて見える。
「入れるんですか?」
「どうなんだろう」
正面の大扉は開いている。大会堂の中をのぞくと、観光客のような見物人が結構いた。ただ、偉そうな貴族の人達ばかりだったので、中に入るのは遠慮した。
「大きな塔ですねー」
スージーがそびえる〈
塔の高さは百メートルを優にこえ、宮殿の中央からつき出ている。頂上付近ははっきり見えないけど、数メートルおきに小さな窓があるのは確認できる。
「無駄にデカいけど、時計塔じゃないよな。防衛の役にも立たなさそうだし、何のために存在しているのかわからないな。実は
「
「私も聞いたことある」
コートニーが言った。ロイの顔つきが変わった。
「よし、じゃあ行ってみるか」
「たぶん、入れませんよ。カギがかかっているそうですし」
「カギ開けの達人がここにいるじゃないか」
「普通のカギじゃないみたいです。ジェネラルが持っている何とかっていう指輪がキーになっていて、それも神器の一つだそうです」
「マンガとかゲームの話みたいですね」
スージーが感想を述べた。
「ほとんどうろ覚えじゃないか。君は言うほど巫女に興味がないのか?」
「いや、何か関わってはいけない雰囲気があるんですよ」
ロイがあきらめきれない様子で〈止り木〉を見上げた。
それから、一時間ほど城内を
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