宿命の敵
◆
ネクロとの問題を片づけた後、トランスポーターはレイヴン城や市街をめぐった。特別な期待はせずに、気楽に巫女をさがした。
ゾンビ出現による混乱には無関心だったが、
とはいえ、ネクロの死亡によって、ゴーレムが活動をやめる確証はない。体力がつきるまで活動を続ける可能性もある。
しかも、適当な場所へネクロを『
そんな時、ただの岩石と
ウォルターとの
七つの能力を
そうこうしていると、マントをまとった
しまいには、
〈
しかし、〈
どこか目立つ場所から、相手の注意をひければ――。
声をかけるのが手っとり早い。だが、声自体は誰の耳にも届いてしまう。また、大声を張り上げるのは気が進まなかった。
仕方なく、相手の目が届く場所で、ジッと待つことに決めた。トランスポーターはそういう
◆
「巫女。ケイト・バンクスは見つかりませんでした」
辺境伯がダイアンに報告した。そばにいたクレアは、突然の再会で頭の中がまっ白になった。一方の辺境伯は
「ひさしぶりだな、クレア」
「うん……」
「岩の巨人をあやつっている男は?」
「その男も見つかりません。仲間に聞けばわかるかもしれませんが、そいつも見つからなくて……」
トランスポーターは〈
「あの、ケイトの居場所ならわかります。さっきまで一緒にいましたから」
「ここに連れて来てくれる?」
「わかりました」
ダイアンがからみついてくるような視線に気づく。目を移すと、見なれない服装の男が、ただならぬ様子でたたずんでいた。
「待って!」
クレアの向かう先にいたため、ダイアンがとっさに引き止める。
確証が得られたことで、トランスポーターの表情に光がさし込む。ついにめぐり会えた
「……誰かいますか?」
「そこの男、見えてない?」
辺境伯が目をこらす。相手が使用するのは自身の能力だが、彼でも
「トランスポーター、姿を見せろ」
トランスポーターはあっさり〈
「やはり、お前か……」
「インビジブル。その女が『
わざとダイアンの
辺境伯が言葉につまる。
しかし、彼らが巫女の命をねらっていることを、嫌というほど知っている。巫女の記憶を残らず失い、行方がわからなかった状況では、抵抗を感じなかった。
しかし、巫女の部下としての自覚を取り戻した今となっては、とうてい受け入れられるものではない。
「トランスポーター。お前とは戦いたくない。ここは
「僕らの目的を、君は知っていたはずだ。理解した上で『
「それはお前の勘違いだ。『盟約』に加わる時の条件は、『転覆の魔法』を解くことへの協力のみ。それ以上の約束はしていない」
「それは初耳だけど、まあ、『盟約』に参加したのは君より後だからね。部分的な協力関係を結ぶあたり、ローメーカーらしいと言えばらしいか。それだけ、君の能力が
「巫女に
「君がここまで変わり身が早いとは思わなかった。信頼の置ける相手だと思っていたから、なおのことがっかりだ」
辺境伯がダイアンの前に進み出た。その攻撃的な態度によって、トランスポーターの闘争心に火がついた。
「君は忘れていないか。〈
「お前こそ忘れるな。俺にはお前らと共有していない力があることを」
辺境伯が手元で『
「ここはいったん退くよ。言いわけじみてるけど、始めから戦う気はなかった。でも、こちらがいつでも命をねらっていることを、忘れないほうがいい。後ろの女にも、君のほうから伝えておいてくれるか」
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