外世界研究会
ジェネラルの憂鬱
◆
顔立ちからは
男はセドリック・オニールという名前を持っているが、
その地位にあることが
彼は現状に強い不満をおぼえていた。本名で呼ばれないことでは断じてなく、ジェネラルの座にあることが、あたかも自然の
今や、その座を本気で奪う
マッチアップされたら運のつき。いつからか、彼はうとまれる存在となり、義務である年二回の試合(そのうちの一回は決まってクレア)を
そんな彼にも、ライバルと見込んだ男が過去に一人いた。その男の名は
「もしお前に勝ったら、俺をジェネラルにって話が出てくるだろ。俺は大自然の中でゾンビとたわむれているほうが、
「まるで、いつでも俺に勝てるような言いぐさじゃないか」
「昔はかなわないと思った。でも、今はわからない。ただ、勝つ気がないのに勝てる相手だとは思っていない。そんなことしたって、おたがいのためにならないだろ?」
しかし、
彼にしてみれば、
自身の地位をおびやかす人物は、
ところが、二ヶ月間の休暇中だった彼の耳に、胸をおどらせる話が飛びこんだ。公然と『ジェネラルの座をねらう』と宣言した新人が、定例会合の場に現れたと。
さらに、その新人は
「思い上がりもはなはだしい」
一緒に話を聞いていた親族は鼻で笑った。だが、彼の受け取り方は
そんな欲求にかられたが、休暇の予定がまだ一ヶ月近く残されている。面会の約束もいくつかあった。おいそれと故郷を離れられず、心ここにあらずといった様子で、もの
〈樹海〉で魔導士の失踪事件が発生したのは、そんな時だった。それに
ところが、
◆
失踪事件が解決してから数日後。例の新人が
「新人が入ったと耳にしたんだが……」
「ウォルターなら城外に出ています。もうそろそろ帰って来ると思うんですけど……」
「そうか、出直してくる」
またもや
中庭の
初めて見る顔に、例の新人という考えが頭をよぎる。けれど、
ジェネラルは足を止め、男の背中を目で追った。部屋の前で立ち止まった相手が、中の人間と二言三言かわしてから、ジェネラルのもとへ引き返してきた。
「君が新人のウォルターか?」
「はい」
「セドリック・オニールだ。ジェネラルと名乗ったほうがわかりやすいかな」
ユニバーシティの頂点に立つ相手を前に、ウォルターがおじけづかないわけがない。さらに、パトリックの行った挑発的な発言が思い返され、生きた心地がしなかった。
「君に関する話をいろいろと耳にはさんだんだが」
「……どんな話ですか?」
「君が『ジェネラルの座をねらう』と宣言した話とか」
「それは
「君は心の中で思っていただけということかな?」
このままでは
相手は挑発に乗るどころか、反対に
自身に立ち向かってくるような心意気は感じない。
「まだ君は
「士官に……ですか?」
ユニバーシティには士官・
ユニバーシティに所属する魔導士はおよそ二千名。士官の階級にあるのは二百人程度で、特別な存在ではないが、
「
「士官になると、何か良いことがあるんでしょうか?」
おいしい話には裏がある。ウォルターの
「もちろんある。君の
ジェネラルが紳士的な語り口と
闘争心をみなぎらせたジェネラルを前に、当然ウォルターはひるんだ。事なかれ主義で人生を歩んできた彼は、
「返答は待ってもらっていいですか? ちょっと学長に相談してみます」
「それはかまわないが……」
普通の人間なら
「ウォルター!」
そんな時、クレアの陽気な声が中庭にひびいた。
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