忘れやすい人々(前)
◇
魔導士
出発の前日、事件解決の
出席していたのはクレアなどレイヴンズヒルから応援にかけつけたメンバーが中心。トレイシー達も招待されたものの、仕事が
ちなみに、クレアに弱みをにぎられた話は、まだ誰にも報告していない。口止めに成功したとはいえ、クレア
◇
帰りも行きと同様に三日間にわたる
「二人ともストロングホールドはどうでした?」
「私は楽しめました。食べ物もおいしかったです」
僕とコートニーは
「今後のためになりそうな発見はあった?」
「君らの
昨日の昼食会でごちそうをふるまわれた話をしてから、ロイは
「ちなみに、どんな収穫がありました?」
「君らが
「お願いします」
ご
「技術レベルの調査は
そこで、ストロングホールドの食文化に
僕らが宿舎に帰ると、ロイとスージーは食べた料理の話ばかりしていた。不思議に思っていたけど、そういう理由だったのか。おそらく、パスタの話と関連しているのだろう。
「
「
「パスタの話は進めるつもりなの?」
「実は、もう自分の考えは決まっている。最有力候補は
そんなわけで、帰りの馬車は乾燥パスタの話で持ちきりだった。ピザはトマトが存在しないし、チーズが大量に必要なので候補からはずれた。
自分も現実に戻ってから、ネットで乾燥パスタについて調べた。
ロイは
◇
レイヴンズヒルに到着したのは、出発から二日後の昼すぎ。移動時間の長さもあって、故郷に帰り着いたなつかしさと、とてつもない解放感を味わった。
「みなさんへのねぎらいの気持ちです」
直接自宅には帰らず、パトリックの屋敷で食事をごちそうしてもらった。その
「
「どのような料理ですか?」
「小麦粉をねって作ったもので、細長くてまん中に穴があいています。たいてい、ゆでて
「パスタ……、名前は聞いたことありませんが……」
パトリックは首をかしげた。この様子だとパスタ自体存在しないか。まあ、僕らにとっては願ったりかなったりの話だ。
「ただ、そのような料理をどこかで食べた記憶なら」
「パスタ自体はあるってことですか?」
「一部地域で作られているのか、それとも、昔存在していたのか。はっきりとしたことはわかりかねますが、最近のことでないのは確かです」
あいまいな答えだ。別の料理と勘違いしていないだろうか。ふと頭をよぎった考えをパトリックにぶつける。
「もしかして、〈外の世界〉で食べたとかですか?」
「そうですね……。それなら、記憶があやふやなのも説明できますか」
パトリックが急にしずんだ様子を見せて、ため息をついた。部屋が
しばらくして、パトリックが重い口を開いた。
「みなさん。一つ、アドバイスさせてください。新しい事業を起こすのはかまいません。ただし、街の方々に協力してもらったり、作業をおぼえてもらおうとするのは、あきらめてください」
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