幽霊パーティー3
◇
鉄製なのでフタだけでも結構な重さだったけど、二人がかりで何とか開けられ、それを後ろの壁へ立てかけた。
いったん明かりを消したので、すぐには中身を確認できなかった。
「明かりをつけてくれ」
「わかりました」
魔法のランプをともし、あらわとなった中身が目に飛び込む。おたがいに口をポカンと開けて、顔を見合わせた。箱に入っていたのは大量のマスケット銃だった。
そう、マスケット銃を用いるのは〈侵入者〉だ。これはそれとのつながりを示す決定的な証拠だ。
「やりましたね」
「ああ。もしかして……、乾燥パスタとか作らなくていい展開か?」
「まあ、乾燥パスタは乾燥パスタでやりましょう」
でも、これだけたくさんの銃で何をするつもりだ。金もうけとは思えないし、反乱でも起こすつもりだろうか。
「証拠として一つ持ち帰りましょう」
「銃は
ロイが『
『ウォルター! 助けてください!』
『……どうしたの?』
『私……、もう怖くて動けません』
『今、どこにいるの?』
『わかりません。屋敷のどこかです』
『それで、何があったの?』
『幽霊を見たんです。女の人の幽霊です』
『幽霊?』
『廊下に立っていたのに、突然フッて消えちゃったんです』
『うん……』
『気になって様子を見に行ったら、今度はポルターガイストです!』
『……ポ、ポルターガイスト?』
『はい、突然イスがジャンプしたんです! 私、もう怖くて動けなくなっちゃって。そうしたら、いきなり耳元で女の人の声が聞こえたんです。「何してるの?」って』
ただ事じゃない。見まちがいだとか、勘違いだとか、
『幽霊です……、幽霊がパーティーしてます。幽霊パーティーが開かれてます!』
『とにかく、今すぐそっちへ戻るから。何かあったら、また連絡して』
スージーは意外と平気そうだし、幽霊も
「スージーは何だって?」
「幽霊パーティーが開かれているそうです」
「幽霊パーティー……?」
「幽霊とかポルターガイストとか、そういうのが
オカルトが
「心配なので急いで戻りましょう。『
「元の場所に戻すことまでは考えてなかった」
つめが甘かった。何十回とくり返し、ピンポイントで『梱包』が解ければ、元通りにできるかもしれない。けれど、そんな
「適当に荒らして、単なるドロボウのように
「そうですね。あと、もう窓から出ちゃいましょう」
侵入した
探す場所同様、荒らせる場所も少なかったけど、小物入れを開けたり、イスを倒したり、ベッドのシーツをめくったり、ひと通り荒らしてから、急いで男の部屋を後にした。
◆
時をさかのぼって、ウォルターとロイの二人が離れに侵入をはたした直後。『交信』で報告を受けた後も、スージーは与えられた役割をつとめ続けた。
同じ場所に居続けるのはあやしまれると考え、人を待っているふりをしながら、本邸の廊下を行ったり来たりした。離れの様子をうかがう時には、横目でさりげなく行った。
パーティー会場への入口がつきあたりに見え、そこには
何も起こらず退屈を感じ始めた頃、スージーはふいに視線と人の気配を背後から感じ、反射的にふり向いた。
廊下に立つ若い女の姿を、彼女の目がはっきりととらえた。ところが、その女はまたたく間に視界から消えた。
始めは見まちがいと考えた。しかし、ほんの一秒にも満たない時間とはいえ、
若い女は茶色いストレートのロングヘアーで、パーティードレスでなく、闇にまぎれるような暗い色のワンピースを着用していた。
何より印象的だったのは、相手が指先で手まねきしていた――と感じられたことだ。
スージーは若い女を幽霊と考え、恐怖に身をふるわせた。この場から逃げだしたい気持ちにかられたが、見張りの役目を果たすという責任感が、彼女をふみとどまらせた。
恐怖をやわらげるため、見まちがいと確かめるため、彼女は勇気をふるって、若い女が立っていた場所へ向かった。すぐそばに部屋の戸口がある。オズオズと中をのぞき込んだ。
その部屋は使用人の休憩室で、
戸口から見える範囲には誰もいない。わずかながら安心感を得て、スージーが廊下へ目を戻した瞬間、バタンと休憩室の中で大きな物音が上がった。
「キャッ!」
おどろきのあまり、彼女は
それにタイミングを合わせるかのように、かわいた金属音が突如として鳴りひびき、スージーは目を疑う光景を目撃した。
偶然では片づけられない現象が続き、彼女は夢の中にいるような
けれど、彼女の身にふりかかった
「何をしているの? イタズラしちゃダメよ」
悲鳴も上げられず、ドタバタと部屋へかけ込んだ彼女は、足がもつれて前のめりに倒れ込んだ。戸口をふり向いても誰もいながったが、
その後、足がすくんた彼女は、立ち上がることさえできなくなり、
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