不運な出会い(後)
◆
城壁塔を飛び出したスコットは、ケイトを目撃した場所へ向かった。
建物のかげに身をひそめながら、慎重に進む。ズシン、ズシンと、ゴーレムの足音があらゆる方向から耳に届き、
「スコット、こっちです」
細い
ゴーレムは建物に侵入できないため、民家に避難している魔導士は数多くいる。ただ、
その民家へ入ると、ケイトがドタバタと二階から下りてきた。
「危ないじゃないですか。部隊とはぐれたんですか?」
「いやいや、お前が一人でうろついていたから、さがしに来たんだよ」
スコットがあきれた様子で反論した。
「あっ、そうだったんですか……」
ケイトが気まずそうに顔をそむける。
「ケイトこそ、何でこんなところにいるんだよ。確か、昨日は城に残るような話をしていたよな?」
「それには深い事情がありまして……」
しばらく彼女は口ごもっていたが、父親の言いつけで宮殿で隠れていたことや、命令もなしに城を飛びだしたことを洗いざらい告白した。
それを聞き終えると、スコットは小さなため息をついた。ただ、結果的に
「しょうがない。うちのチームに加わるか?」
「いいんですか?」
「今さら、城に帰すわけにもいかないしな。だけど、覚悟しろよ。うちのチームは、最も危険な任務にあたっているからな」
「やっぱり、遠慮させてもらいます」
「待て待て……。いや、うちのチームでなくてもいいか。どちらにせよ、こんなところに一人でいるのは危険だ。どこかの部隊と合流するまで、俺と一緒に来い」
◆
城壁塔から脱出したスプーは、
レイヴンズヒルまで来た『
この『器』はすでに顔が割れている。能力が通じないウォルターやパトリックからは、ひと目で正体を
スプーたち『エーテルの怪物』は、
しかし、何も食べないでいると、
スプーは
敵の目をごまかすため、多少は
◆
スプーは民家を後にし、路地へ出た。その時、偶然にもスコットとケイトの二人と行き会った。ポーカーフェイスをくずさなかったが、それが逆に
「おい」
そのまま脇を通りすぎようとしたが、前に立ちはだかったスコットが呼び止めた。
「どこへ行く?」
「今から城へ戻るところだ」
「
スプーは言葉につまった。今は『
「単なる
「伝令だって、
大門付近の
「腕章……。どこかで落としてしまったようだな」
「だったら、部隊名と腕章の色を答えてもらえるか。落としただけなら、わかるだろ?」
「……君たちも腕章をつけていないようだが?」
「俺たちは特別な任務を与えられていてな。あいにく、どこの部隊にも所属していないんだ」
「念のため、特別な任務とやらの内容を聞いておこうか」
「お前みたいなやつを、さがす任務だよ」
観念したスプーは肩をすくめて、大きなため息をついた。
「わかった。認めようじゃないか。おそらく、私は君たちがさがしている男だ」
あせった様子もなく、ふてぶてしい態度で言い放った相手を見て、スコットは恐怖をおぼえた。ケイトがスコットの背後に隠れる。
「ムダな血を流したくない。見逃してくれないか?」
用心深いスプーは確実に勝てる戦いしかしない。彼のとる戦法は、いつだってだまし討ちだ。
「見逃すわけにはいかないな」
チーフのかたきを討つと決めた。たとえ
「ならば、言いかえよう。――図に乗るなよ、魔導士
たった今起こった『
最悪のタイミングだった。スコットにとって、あまりに不運な出会いとなった。
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