第41話 お金を貯める
きれいな青空の下、木々は色づき、足元には落ち葉が広がる。踏みしめるたびに乾いた音を鳴らしているので、寂しいような、楽しいような、不思議な感覚になった。
今日は一段と冷えていた。
3班は、課題そっちのけで薬草採りをしている。
「私のことで、皆を巻き込むのは申し訳ないわ」
じんわりと涙を浮かべて訴えるカレンに、イアンは軽い調子で応じた。
「カレンのためだけって訳ではないよ。カイト先生が、班のメンバーを紹介するときに言っていただろ? この班のメンバーなら、うまくできるみたいなことを。支えられるだったかな? 最初は、その意味がわからなかったんだけど、今は、俺ならできるって選んでもらえたのかと思えるんだよ」
「どういうことよ??」
「だから、俺を必要としてくれるのが嬉しくって。だから、カレンのためだけじゃないんだ。俺のためでもあるってこと。せっかく、その体質から解放される方法が見つかったんだろ? 課題だって、まだ二年以上あるんだぞ。これだって、3班に課せられた課題だと思うしな。大丈夫。皆と一緒に頑張ろう」
イアンが、カレンの背中を軽く叩いた。
「皆、迷惑だって思っているんでしょ」
部屋でがっくりと項垂れるカレンに、ミハナが抱きついた。
「カレンちゃんが気にする必要ないって。私ね……。実は、エインスワール学園に入ること、家族に反対されていたの。お父さんになんて、回復魔法が得意なら医師としてやっていけるって、何度も言われた。それでも私にはやりたいことがあったから、一人で頑張って、反対を振りきって受験して、合格したけど、あんまり喜んでもらえなかった。3班はね、私の家族なの。家族を助けるのは、当たり前でしょ。そんな悲しいこと言わないで。思ったより稼げているし、頑張ろう」
ミハナが、花が綻ぶように笑った。
「皆に迷惑かけて……。ユージだって、仕送りできなくなったでしょ。ユージの家族にまで迷惑かけてる……」
カレンが、一筋の涙を流した。
「あぁ、仕送りのことは、カレンが気にすることはないよ。家から、やめてくれって手紙が届いて。弟たちが、俺を頼りまくってて働かないから、困ってるらしいんだ。心配だから、長期休暇には帰ろうと思っているけど、皆も来るつもりだろ? そのとき、カレンだけ置いてはいけないよ。絶対に間に合わせて、一緒に来てくれよな。半分くらいは貯まったんだし、大丈夫。もう少しだよ」
ユージの大きな手が、カレンの頭におかれた。
「ねぇ、レイン。皆が私のために頑張ってくれているのはわかっているの。でも、申し訳なくて……。私、どうしたらいいのかしら……?」
「う~ん。僕だって、皆に魔力をもらっているよ。カレンだって分けてくれるでしょ。魔力だって、生きることに直結しているんだから、お金と同じくらい大切なものだよね。でも、僕は貰わないと生きていけないから。だから、皆にお返しするには何がいいかって、いつも考えているんだ」
そこで言葉を切ると、濁りのないまっすぐな瞳でカレンを見つめる。
「僕はね、皆への恩返しは、まずは笑顔でいることだと思うんだよ。それから、少しづつ、返せるときに返そうかなって。だから、カレンの手伝いができて嬉しいよ」
「それで、いいのかしら?」
「あとで、思い付いたときに返そう。一番魔力を貰っているニーナは、一生守るって決めているけどね」
カレンは、いつもの調子を取り戻し、呆れた顔をした。
「レインは、相変わらずね。ニーナだけは、特別扱いなんだから」
「そりゃそうでしょ。ニーナの魔力は美味しいんだよ。5万エルまであと少しだよ」
「ねぇ、ニーナ。私、迷惑かけていると思うんだけど、みんな大丈夫だっていうのよね」
「へ?」っと、気の抜けた返事が返ってくる。
「そりゃ、そうでしょ」
「そんな、簡単に言わないでよ。私、結構気にしていたんだから」
「気にしているのは、知ってたよ。でも、私がカレンと出掛けたいんだから。それなら、一生懸命、お金を貯めた方がいいでしょ」
「でも、課題は遅れちゃうし、みんな一日中薬草採ってるし。最近では採り尽くして、見つけるのが大変になっちゃって」
「課題は、大丈夫!! そのために夜はイアンに勉強教えて貰っているし、学園の課題って、実践中心だよね。だから、この経験も無駄にはならないよ」
「本当に、ニーナは、呑気でいいわね~」
「そりゃあね。楽しくなくっちゃ、ダメでしょ!!」
ニーナが、ニヘラっと笑う。
朝から夕方まで薬草を採って、夜は本で勉強。イアンを中心に、テストになっていることについて、皆で学んだ。テストの教科は、ライアやこっそりスワンに教えて貰った。
ついに、口座に入っている金額が、5万エルを越えた。
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