第95話 救出
レインに抱き締められて、逞しくなった彼に全身を預けた。
今更ながら、身長が伸び、体つきも男らしくなったことを実感する。
「ニーナ、大丈夫? 酷い目にあわなかった?」
「うん。大丈夫。あっ、トーリ先輩もいるの」
トーリを助けにいこうとレインから離れると、力強く引き戻された。
「あっ、ちょっ、ちょっと待って」
「あっ、ごめん。ごめん。魔力?」
すっかり忘れるところだった。レインは一人で来てくれて、魔法もたくさん使っていたのに。
モソモソと手を差しだすと、そのままぎゅっと抱き締められる。
「このままでいい」
スーッと優しく魔力が抜けていく感じがして、それが少しづつ強くなる。
「ニーナ。心配したよ」
「ごめん。これがさぁ」
足を揺らすと、鎖の音がした。
「ちょっとだけ待ってね。すぐに取ってあげる」
ぎゅっと強く抱き締められた。
レインだったら、魔力をあげるのも、触られるのも、嫌じゃないのにな。
そんなことを考えていると、レインがしゃがんで鎖を引きちぎってくれた。魔道具も足から抜いてくれる。
「レイン? もう、魔力、大丈夫なの?」
いつもに比べて、必要な魔力が少なかった気がする。
「うん。これ」と、ポケットから濁った魔石を取り出した。
「皆の魔力、分けてもらったんだ」
ライアからもらった魔道具で、使い果たした魔石に魔力をいれてもらってきた。
レインがコロコロと取り出すのを見ていると、大きな魔石が8個もあった。全て使い果たしている。
「あれ? 残ってないじゃん。もっと時間かかったら、どうするつもりだったの?」
予備に一つくらい残しておかないと、魔力がなくなって苦しくなってしまう。最悪の場合は……。心臓がきゅっと痛くなったと同時に、無事でよかったと思う。
ニーナの心配をよそに、レインはニカッと笑う。
「これがあるから、大丈夫」
見たことのない魔道具。手のひらくらいの大きさで、真ん中には大きな魔石が輝いている。
「何これ?」
「対になっていて、もう片方ので、これの位置がわかるんだ。皆がそれを持って、ついてきてるよ。
もうすぐ、来るはずなんだけどなぁ~」
キョロキョロしたと思ったら、
「あぁ、来た、来た~」
と誰もいない方向、というか、目の前の壊れ掛けた家を指差す。
家の延長線上のずっと遠くで、レインの魔力探知に引っ掛かったのだろう。
皆を迎えにいくと、ビックリするくらいの大所帯だった。3班とカイト先生、ソーヤと名乗った見覚えのある人。トーリの班員まで来ていた。ベルゼバブと聞いて、一縷の望みを抱いてついてきたらしい。
「あれ? レイン? ニーナ。もう、終わったのか?」
「うん。楽勝~」
レインは「こっちだよ」と手招きした。
トーリ先輩と女の子は助け出された。
トーリの周りでは、謝りまくったり、涙を流して抱きついたり、感動の再会が繰り広げられている。
トーリの魔道具はきれいに腕にはまっていて、鍵を使うか壊すしかなかった。
レインが壊したのだが、その際ちょこっと触れた。
「ぅえぇぇ?? あれ??」
奇妙な声をあげたトーリは、可愛らしい後輩のレインにだったら、いくらでも魔力を渡せると思っていた。助けてもらっているし、ニーナや班員とも良好な関係を気づいている。魔力食いとかそんなことで、レインのことを評価すべきではないとわかっていた。
「どうしたんですか?」
トーリはレインをペタペタ触っている。
「レイン君、スーッとしない……?」
「僕、ちゃんと調節できますよ。
皆、お腹が減ってても、ちょっとくらいは我慢できるしょ。それと同じです」
「そ、そういうものか?」
首をかしげているトーリに、胸を張るレインが面白い。
「3班が規格外なのか、レインが規格外過ぎるのか……」
トーリの呟きに、「どっちもだ」と誰かが答えた。
女の子の鉄格子は、魔法が使えるようになったニーナが、最大限の『身体強化』魔法で、こじ開けた。
女の子は、目を丸くして口をあんぐりさせていたのだが、これがニーナたちの平常だ。
女の子は、ミハナの『回復』を受けて、さらに医者にもかかり、その後で家に帰されるそうだ。トーリの班が送っていくと、名乗り出ていた。
外で気絶していた仲間二人は、捕えられた。この二人は、エインスワール学園のダンジョンに出入りしていたことが、確認されている。レインの存在に気がついたのも、この二人だった。
この隠れ家を使っていたのは、エアルという幹部だということは伝えられたが、その幹部を逃がしていた人物の特徴までは伝えられなかった。
ニーナと同じ、ストロベリーブロンドの髪だったことは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます