第134話 砂漠のダンジョン4
ツノイノシシを倒した後、お金になる部分をとっていると、レインがしきりに辺りを気にし始めた。
「どうした? 何が気になる?」
ユージがレインの隣にたつ。
「あぁ~、やっぱりぃ~」
レインががっくりと肩を落とす。
その声に皆が顔を上げた。
「ほらぁ~。ついてきてるよ」
レインの示す方向に、ブラウン商会のパーティの姿がある。
「ホントだ。もう来たのか……。帰りに現れると思ったんだがな」
町にいる間もつけられているようで、何度も姿をみた。煩わしかったのもあり、ダンジョンに戻る日をおおよそで伝えた。その後は姿をみなかったので、帰るころを見計らって現れ、荷物を寄越せと言うのだろうと思い込んでいたが、違ったようだ。
ジムに聞いた話では、彼らは7階で活動していたはずだ。しかし、ここは9階。
「少しまえから、つけられているような気はしていたんだよね~」
レインが怪しいと思ったのは、9階に繋がる階段付近だったという。
3人組はレインに見つけられ、一度は隠れるかのような動きをしたのだが、見つかっていることがわかると、開き直ったようでどんどんと近づいてくる。話しかけてくるのかと思ったら、ある程度の距離で立ち止まった。
「どういうこと?」
訳がわからず、声を潜めた。
こちらから近づくと、後ずさる。
『身体強化』を使って一気に距離を詰めてもいいが、「この辺で活動している」と言われて終わる気がする。
「さすがに上級の階層まではついてこないよね?」
「う~ん。たぶん」
10階からは、上級だ。
彼らは中級冒険者だったはず。普段から中級と上級の境目辺りで活動しているのならまだしも、7階が活動の中心なのだ。今、9階にいることも、無理をしているのかもしれない。
『身体強化』で走り抜けて撒いてしまいたいのだが、9階までくると魔物が強くて一撃でというわけにはいかない。
倒すのに手間取っていると追い付かれる。
撒くことができないのであればと開き直って、倒した魔物を解体してから進むことにした。
10階に下りる階段の手前で立ち止まる。
3人組に向かって声を張り上げた。
「ここを下りれば、上級のエリアです。準備をしっかりした方がいいですよ」
話しかけても、なんの反応も返ってこなかった。ニヤニヤ笑っているのみ。
実力が足りない場合、困るのは3人組なのだが。
「一応進もうか」
あまり構っていても、自分達の依頼が進まない。
ロックタートルを倒してみれば、彼らの思惑がわかるかもしれない。
「レイン、いる?」
「あっちに、なにかいるよ」
「一応、ゆっくりいこう」
本当は、いつものスピードで走りたいのだが、3人組がついてきているとしたら、振り切ってしまうのは不味い。
勝手についてきたとはいえ、10階で迷って怪我などしては寝覚めが悪いから。
「ロックタートルだね。倒そうか」
思った通りというか、なんというか……。3人組はついてきていた。
「ニーナ。やっちゃっていいよ」
ロックタートルがまだ警戒していない距離から、一気にトップスピードに乗ったニーナが、背中に担いだ大剣を抜き放つ。
ニーナの接近に気がついたロックタートルは、ジタバタと動き、手足と首を甲羅のなかにしまおうと動く。その動きも早いのだが、それ以上にニーナが早かった。
仕舞いきるまえの頭を、大剣で殴打する。
脳震盪をおこしふらついたロックタートルの首を、大剣で切りつけた。
「ニーナ、ナイス!!」
「間に合った~」
ニーナの打撃が早いか、ロックタートルが首を引っ込めて甲羅を閉じるほうが早いか。
甲羅を閉じられてしまえば、なかなか攻撃が通らずに、長期戦になってしまう。ニーナのスピードが勝る確率は、五分というところだった。
一応、3人組の様子をうかがうが、ニーナの動きが早すぎて、理解できなかったのだろう。キョトンとしている。
甲羅から宝石部分を取り出すと、大きなアメシストだった。最上級品と言ってもいいだろう。
「ローズクオーツじゃない……」
がっくりと肩を落とすイアン班とは反対に、3人組は近づいてきてじろじろと宝石を見てくる。
やはり、宝石が目的のようだ。
持ってきた袋にいれて、台車にのせる。
さすがに、この前のように、無造作に転がしておく気にはなれなかった。
何も見ていないとでも言いたげな顔で遠ざかっていく3人組が気になるが、あまり構ってもいられない。
「次にいこう」
レインの示した方向へ、走り出した。
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