第121話 特別課題3
「降りてみようか」
この花畑ならば、台車を残していっても魔物に荒らされることはなさそうだ。
階段をゆっくりと降りていくと、岩がむき出しの地面についた。
「あまり、木は生えていないね」
所々、草が生えているところがあるのみだ。
「視界はいいな。これならドラゴンはすぐに見つかるかも」
そういいながら見回したが、岩と草しか見えない。
「う~ん。すごい広いね。あっちに魔物はいるけど、ドラゴンかなぁ? 思ったより魔力が小さいなぁ~」
レインの示す方向にいってみると、ブラックスネークだった。
「一応、倒しておこうか」
ブラックスネークは、どちらかというと好戦的な魔物だ。逃げてもいいが、見晴らしがよすぎて、遠くからでも向かってくる。ドラゴンと戦っているときに後ろからせまってくるようなことは避けたい。
ニーナが『身体強化』で走り出す。背中に背負った大剣に魔力を流し込み、真っ黒い大蛇の目前にせまると、ステップを踏むように横に移動し、牙を躱して背後に回り込む。そのまま体を反転させ、思いっきり大剣を振り抜いた。
大根でも切るかのようにザクッと首を切り落とすと、ドスンと地面に落ちる。
「ニーナ!! ナイス!! 急いで解体しよう!」
あまり高く買い取ってもらえないが、ちゃんと売れるところは取り出していく。
学園に入学したてのころ、薬草を集めてお金を稼いでいたこともあって、売れるものは無駄にしたくなかった。
魔石も取り出して、皮も綺麗にはいで、肉は・・・。
「あぁ!! あっちに大きな魔力!!」
「ドラゴンか!?」
「いってみよう!」
「えぇ~!! 今日の夕飯~!!」
「ニーナ!! あとでなにか倒せばいいよ!! いくよ!」
「えぇ~!!」
魔物の死骸は、地面に置いておくといつのまにかなくなっている。他の魔物の食料になっているということもあるが、魔力に戻ってダンジョンに吸収されているのではないかというのが、大方の予想だ。
レインに引っ張られるように向かったそのさきには、黒い山のようなものがあった。
「寝てる??」
よく見れば、固そうな鱗でおおわれ、ゴツゴツしている。
「起きないね~」
他の魔物に比べて、圧倒的に強いドラゴンは、襲われるということがないので、警戒心がないらしい。
隠れるわけでもなく、見晴らしのよい場所で熟睡しているようだ。
「攻撃してみる?」
「そうだね。攻撃が通るといいけど」
いつでも真向勝負をしてきた3班としては、不意打ちをするのは少しだけズルいような気もするが。
魔方陣を描く。それぞれ一つの魔方陣に全力の魔力を注ぎ込む。
「風刃!」
黒々とした鱗に弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいった。
「嵐!」
丸まったドラゴンはピクリともしない。
「雷!」
鱗の表面を電撃が走り抜ける。
ドラゴンはごろんと転がった。さっきまで見えていたのは、背中だったようだ。今は、腹這いになり、薄目を開けて3班を見ている。
「熱!!」
鱗に魔法防御でもあるのだろうか。魔法が弾かれているようだ。ドラゴンは涼しい顔。
「熱!!!」
地面を暖めると、モソモソと移動して、熱くなったところを避けた。熱いのは、感じるらしい。
「直接攻撃は、危ないかなぁ~?」
レインが剣を構えると、ニーナも大剣を構えた。
「やってみよう」
『身体強化』で走りだし、近づいたところで大剣に魔力を注ぐ。最大限に切れ味を増した剣で切りかかると、鋭利な尻尾が鞭のようにとんできた。
ガチン!!
なんとか大剣で受けると、甲高い音が響く。あまりの勢いに、小柄なニーナは遠くまで飛ばされた。
「ニーナ!!」
レインの声が聞こえた気がする。
すぐに下半身の『身体強化』を強くして、なんとか着地した。
もう一度向かっていくが、ちょうどレインが尻尾を剣で受け止め、吹き飛ばされているところだった。
「レイン!!」
レインもなんとか着地したようだ。
ドラゴンは、尻尾を忙しなく振って、威嚇しているようだ。
尻尾を避けて切りかかろうとしても動きが早い。
ニーナはもう一度吹っ飛ばされた。
見えた!!
「ニーナ、大丈夫?」
レインに助け起こされると、皆も集まっていた。
「何か変なんだ! 尻尾に触れたはずなのに、魔力を奪えなかった」
レインの剣は、魔力食いのための特別な剣。剣が魔力を奪うことができる。
「やっぱり??」
「ニーナ、何かわかったの?」
「音が、金属にぶつかったみたいなの。剣のようなものがたくさんついていた」
「尻尾を叩き切るのは、厳しいか」
「尻尾の先は無理だね。根本なら、だけど、どうやって近づくか、考えないと」
今もドラゴンは、腹這いで気だるそうに薄目をあけ、長い尻尾を振り回している。
ドラゴンを見据えて、3班は散開した。
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