第120話 特別課題2

「まずは、階段を探さないとだよね」


 今回は、ドラゴンがどんなものなのか下見に来ただけだ。特別課題にもなると、本にかかれていることは表面的なことが多く、どんな魔物なのか、しっかりイメージできていない。


 今わかっていることは、巨体でがっしりしていて黒い。爪が鋭くて魔法を使う。翼はあるが、身体の大きさに対して小さく、飛ぶという記述は見つけられなかった。


「あっちこっち行ったつもりだけど、ほとんどが湖の近くにいたんじゃないかな?」

 レインが言うなら、そうなのだろう。魔物を探して歩き回っているときもあったが、レインに言わせれば、「もっと向こうに広がっていそうなんだよね~」と、まだまだ行っていない場所があったようだ。


「こればっかりは、とにかく探すしかないよ」


 下の階層に続く階段は、ぽっかりと穴が空いているだけで遠くからはわかりにくいものもある。浅い階層だったら、本を調べれば書いてあったのだが、ここまで来ると階段の位置はおろか、地図もほとんどわからなかった。


 学園生は、ダンジョンのマッピングをすることもあるので、その練習も兼ねているのだろうと最近では思っている。


 ちなみに3班は、このマッピングという作業が非常に苦手だ。大体の方向はあっているが、距離はあっていない地図が出来上がる。


「見つからなければ、一度、11階に戻るしかないな」

 下りの階段がわかりにくいかわりに、登りの階段は天井まで延びているのでみつけやすい。



 結局、しばらく探しても階段は見つからず、11階に戻った。すでにテントを張り終えていた1班に「階段探しからなんですね……」と、驚かれてしまった。




 次の日も、様々な場所を探したと思うのだが、階段はみつけられなかった。





「階層13でドラゴンを・・・」

 ニーナが課題の紙を読み上げている。

「13階は、存在するんだよね?」

「そこから、疑うか??」


「あると思うよ。もしドラゴンがこの階にいれば、もう見つけているはず」

 レインが確信を持って言う。ドラゴンは巨体で魔法を使う。魔力も多いはずで、これだけ歩き回れば気配くらいは感じるらしい。

「そうだよね~」


「今日は、この階の端を回ってみない?」

 昨日はあまり考えずに、闇雲に歩き回ってみただけだ。

「やってないことをするしかないよな」

 レインの提案に、ユージが賛成した。


 階層の端は岩が天井まで延びている。岩の壁をなぞるように進んでいると、壁が切れているように見える場所があった。


 近づいてみると、奥に続いているようだ。入り口部分はくびれるようになっていて、中は丸くなっている。


 慎重に歩を進めると花畑が広がっていて、真ん中に水場があった。


「こんなに花が咲いているなんて、珍しいわね」

 カレンが珍しい光景に、警戒しながら歩を進める。


 草原や森になっていて、少しだけ花が咲いている場所はあったが、人の手で手入れされているのではないかと思うほどの一面の花畑は始めてだ。


「きれいなところ~」

「珍しい薬草なんかもありそうだな~」

「ねぇ~。水のなかにも何かない?」

「うわぁ~!! 水草まで花をつけてる~!!」

「きれい~!!」


 皆で水場に集まって、覗き込んだ。清んだ水の中には、白い花がユラユラと揺れていた。


「冷たいな~」

「気持ちいい~」


 水に手を突っ込む。


「ここなら、テントを張るのにもいいんじゃないか?」


 入り口がくびれているので、魔物が入ってきにくい。もし入ってきたとしても、花畑なので見張らしがよく、すぐに気がつくことができる。


「ねぇ、それよりも、あれってなにかしら?」


 カレンが、水場の真ん中を指差している。


 石が積み上げられて、祭壇のようになっていた。高さは腰くらいだが、広さは小屋一つ分くらいか。


「なんだろ~」


 池の周りを回ってみたが、小島のようになっていて、池に入らなければたどり着けそうになかった。


「ジャンプかな?」


 助走をつけて、『身体強化』もかけて、一番遠くまで跳べると思える方法で、跳んだ。


 ビシャン!!


「あぁ!! ちょっと濡れた!!」

 足ひとつ分足りなくて、片足が池に入ってしまった。

 ニーナでそれでは、他のメンバーでは届かない。皆も一歩、もしくは二歩水のなかを歩いて祭壇に到着した。各自、魔法を使って乾かす。


 祭壇に上ると・・・・ぽっかりと空いた穴が。


 下に続く階段が、口を開けていた。

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