第56話 武器決定
「わぁ~きれい!!」
キラキラと輝く、エインスワール印のネームプレートだ。魔法の掛かった特別な金属でできている。
エインスワールの紋章が浮き彫りされたプレートの上に、それぞれの名前が掘られている。
うっすら雪が積もるなかでは薬草採集は厳しく、防具を買うのに時間が掛かってしまった。防具といっても、魔法を少し防ぐことが出来るインナーのようなものだ。はじめは一階や二階といった初級相当の階層しか行かないので、これで十分だ。
四階からは中級相当、そうなると防具も更新しなければならないようだが、そこら辺の細かいことは、まだよくわからない。
情報提供先のスワンから聞いた話だと、1班の中がギクシャクしすぎていて、あまり課題が進まないようだった。
台車とポーションボックスは借りるとして、中にいれるポーションは作らなければならない。
最後に熱処理して殺菌しているものの、栄養満点の薬草を濃縮してつくったものだ。常温では三日程。ポーションボックスで冷やしていても十日ほどしかもたない。
ダンジョンに行く度に作らなければならないし、場合によっては、ダンジョン内で作ることもあるかもしれない。
「じゃあ、武器を選びに行こうか」
ネームプレートを大切そうにしまうと、バルド先生との約束の場所に向かった。
校舎のすみ、窓すらない一角に武器庫はあった。
扉を開いて、明かりをつけると、重なるように壁に立て掛けられた無数の武器が目に入る。
「すご~い」
「この中から、選ぶんですか?」
「選べないかも……」
「先生、どうやって選べば?」
あまりの数に、武器庫に入ったところで足が止まる。
「あぁ、そうだな。実際に触って重さを確かめたり、そこの資料を見て探したり」
手当たり次第に手に持ってみても、どれがいいのかわからない。
「とにかく、資料をめくってみようか」
ほとんどの武器は、素材や長さ、重さなどが書いてあるが、魔力を流すと魔法が使える剣や、血塗られた剣なるものまであった。持つと、殺戮本能が呼び覚まされるのだとか。学生に貸し出す武器の中に入れるなよと思わないでもない。
「今から選ぶのは、お前達が生涯使う武器だ。途中で変えることもできるが、その度に調整が必要になるから、慎重に選ぶように」
エインスワール隊として、貸し出す武器らしい。そう思えばいわく付きの武器があるのも頷ける。エインスワール隊に入るような人ならば使える人もいるかもしれず、もし使えれば、恐ろしい強さを発揮するのだろう。
武器から魔法が出るのもかっこいいと思うが、武器が使える魔法は一つらしい。例えば雷の魔法だったり風の魔法だったり。
ユージなど、魔方陣を巧みに操り戦うスタイルに憧れているので、武器は普通がいいという。
「お前ら、そろそろ決めてくれ……」
バルド先生の顔に、疲れがにじむ。
実は、悩みすぎて、三日間もバルド先生を付き合わせている。
「ニーナは、これ。レインは、これ。他に、特別な武器がいいって人いる?」
イアンが、ポイっとニーナとレインに資料を手渡した。
ニーナの武器は、ジワジワと魔力を消費するかわりに、持ち主に合わせて重さが軽くなり、切れ味が増す大剣。
本来なら、いわく付きだと言われている武器。魔力を使って戦うのに、武器が魔力を使ってしまっては、魔導師として戦えなくなってしまう。
ニーナほどの魔力がなければ使えない代物だ。しかもニーナは身体強化が得意だ。大剣でも問題なく扱えるだろう。
レインは、切りつけた魔物から魔力を奪い、その魔力を使って魔方陣が発動できる、魔力食い専用の剣。ただでさえ、魔力が減っていくレインには、有効な武器になるだろう。魔力食い以外でも使えればいいのに、武器が魔力食いの体質を伝えているだけなので、魔力食い以外が使っても普通の武器になってしまう。
他のメンバーは、長さや重さは違えども、切れ味に優れた普通の長剣に落ち着いた。
しばらくは、様々な場面を想定して、素振りに明け暮れた。午後の練習場で。たまに、カーシャ先生の愚痴を聞きながら。
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