第149話 つかの間の休息

「えっと、イアン?? 頼んだものをとってきてくれたのは嬉しいけど、こんなに使わないよ?」

 二台あるうちの一台の台車に、メタルタートルからとった金属が山のように積まれているのを見つめて、ライアが目を丸くする。


ライア兄さん、色々大変だったんだよ」


 国境のダンジョンで起こったことを簡単に話す。

 反乱の兆候はなくなったが、ダンジョン事務所の問題を調べるためにたくさんの隊員が派遣されている。長年の罪を明らかにし、すべての被害者を特定し、賠償まですませるには途方もない時間がかかるだろう。


「そういうことか。大変だったんだな。本部がバタバタしていたから、何かあったのかとは思ったけど」


 国境のダンジョンでも、ライア班の魔道具は活躍した。少しでも早くすべてのダンジョンに配備するため、製作に集中してほしいと、細かいことまで教えられていなかったそうだ。


「それで、メタルタートルの金属は、売らずに全部もってきたってわけ」

「それにしても、多くないか?」


 ニーナが「ん~、でもぉ~」と考えている。イアンがふっと笑って、説明を引き継いだ。

「ロックタートルの宝石が、色々あっただろ? もしかしたら、同じ見た目でも違うものが混ざってるかもしれないと思って、全部もってきたんだよ」


 ライア班のメンバーは、各自、ロックタートルを思い浮かべたのだろう。斜め上をみながら、指を折って数えている。


「ロックタートルって、何種類くらいあるんだっけ?」


 こんどは、イアン班が思い出す番だ。


「えっと、10はあったよね」


 砂漠のダンジョンでのことを思い出す。ただし、途中からピンク色に見えるものを狙って倒していたので、全て把握しているのかはわからない。


「・・・・・・」


「じゅう…………」


 一番上に乗っていたものを手に取り、隣に並べてみたり、上に掲げてみたりしている。


「う~ん。色が微妙に違うような気もするなぁ~」

 ライアが班のメンバーにも手渡して、みんなで見比べ始めた。


「これは……。骨の折れる作業だな」


 げんなりとした顔をしている。量産するために設計図を作り直し、部品を注文するだけでも大変な作業だっだ。魔道具の肝となる金属が手に入れば、出来上がってきた部品を使って、組み立てるだけだと思っていたのに、その前に金属の選別が入ってしまった。


 目的の金属がどれかもわからず、含まれている割合もわからない。


「一応、全部受け取るよ。数えて、本部に申請するから、入金はその後になるよ」

「一袋に50こずついれてあるはずだから」

 スワンがちょうどいい袋を縫って、分けておいてくれたのだ。

「ひぃーふぅーみぃー・・・・・、300は越えてるぞ」


「たしか、348だっけ?」

 スワンが大きく頷く。


「はい。魔道具のメンテナンスはできたよ」

 メンバーの一人が、イアン班の魔道具の手入れをしてくれた。通信の魔道具を手渡すとすぐに金属を手に取る。

「え~と。数えなくても、いくつか違うくらい、誤差なんじゃ……」

 ライア班が数えるのを諦めで、手近なところにあった金属を手にとって、眺め始めた。


ライア兄さんたちは、王都、詳しいよな?どこか、美味しいお店とか教えてよ」


 砂漠のダンジョンのあと、すぐに国境のダンジョンに向かい、しかも、反乱を止めるために連日ダンジョンに潜り続けた。かなり無茶もしたので、少し休むように言われてる。


「ん~珍しいものなら、アイスクリームとかか? ナッツをペースト状にして練り込んだアイスクリームが美味しいとかって話題になってたぞ。それから、せっかくの休みなら、武器や道具の整備をしておけよ。専門家に頼んだ方がいい。手が空いてれば、やってやるんだけど」


 「アイスクリーム!!」と騒ぎ始めたニーナとカレンを微笑ましそうにみながら、地図を書いて渡してくれた。

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