第160話 ガジェット鉱山のダンジョン8

 『身体強化』で光った方向へ進む。

 駆けつけている間にも、何度も空に向かって光や炎が吹き上がった。


「なんか変じゃない?」

 普通、魔法は魔物に向かって使う。空に向かって、魔法を放つなど……。


「えっと。魔力が、すごいたくさん!!」

 レインが叫ぶと、その言葉でイアンが気がついた。

「やっぱり、カイト先生達だ!!」

 助けを求めている!!

 なにも言わなくとも、示し合わせたかのようにスピードをあげた。


「あっ!! あそこ!!」


 カイト先生が、防御の魔方陣を書いて飛んできた火球を弾く。


 前にも一緒に戦ったソーヤが、たくさんの魔方陣を出現した状態で動き周り、隙をついて『風刃』や『氷礫』を叩き込んでいる。しかし、あまり、効果は出ていないようだった。


「カイト先生!! 大丈夫ですか??」

「気がついてくれて助かった!! 分が悪い!!」

 カイト班は、複数人と対峙していた。

「うわ!! やっぱりこいつらだ!! 追いかけられたから、変だと思ったんだ!!」

 こちらを指差して大声をあげたのは、ベルゼバブ幹部のエアルだった。トーリ先輩の魔力に執着している男だ。


 近づいて良く見ると、木々の中に結構大きな建物が建てられていた。石と木を使って建てられた建物の入り口は、開け放たれている。


「クアルさん!! こいつらヤバイですよ!! 僕から、トーリ君を奪った奴らです!! 僕だけじゃあ、こんなに対応しきれないですよぉ」


 建物のなかに向かって、懇願するように叫んだ。

 エアルの他には、5人ほどの男が剣をかまえている。


「はぁ~? おまえ、魔力食いだろ? 魔術師に負けるわけがないだろ?」

 家の中からは、しわがれた声が響く。

「違うんですよ!! あいつ、魔力食いですよ!!」


「はぁ?? どいつだ?」


 建物の中から、真っ黒い服を着た男が出てきた。顔にはシワが刻まれていて、髪は白くなっている。初老といっても差し支えがなさそうだ。痩せていて、ギョロっと目だけが大きい。


「あいつです!! あの黒い髪に、緑っぽい目の!!」

 レインに視線を合わせると、ニヤリと笑った。

「俺たちの仲間じゃないか」

 レインは嫌そうに顔を歪める。

「何で、魔力食いってだけで、仲間だって思うんだろうね。僕は、エインスワール隊なのに」


 ニーナが、レインのとなりに寄り添うように立つ。


「おまえ、まだ彼女に愛想つかされてないのか。いつ嫌われるかわからないぞ。何て言ったて、おまえは魔力食いなんだからなぁ」

 エアルの苦々しい言葉には、実感がこもっていた。


「レインのこと嫌いにならないよ」

 ニーナが腕を組んでエアルを睨み付けた。


「そんなのわからないだろ? 人の気持ちなんて、いつ変わるかわからないんだ。失ってからじゃ、遅いぞ。今のうちに閉じ込めておけば、いつまでも一緒にいられる。全ては、おまえの思うままだ」

 エアルは、閉じ込めておく以外の方法を知らなかった。


「ニーナには、笑っていてほしいんだ」

 レインの言葉に迷いはない。


「まだ、そんな甘いこと言っているのか? ここは魔力も多いし、外から冒険者も入ってこない。隣国からの道も近いから、交易の馬車も通る。快適だぞ」


 「へぇ。そうなんだ」とレインはどうでも良さそうだ。


「これって、お前らが作ったのか?」

 カイトが口を挟んだ。誰もが気になっていたことだ。


「そうに決まっているだろ。はじめは隣のダンジョンに作ったんだがな、建築しているうちに切り離されて、入り口も別にできてラッキーだったな。こんないい隠れ家があるんだ。レインくん、ベルゼバブに入らないか?」

 レインがうんざりした顔をした。

「もう、その話はいいよ。こいつら捕まえればいい?」


「相手はベルゼバブだ。生死は問わない」

 カイト先生が言う。イアン班が、レインを中心に展開した。

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2024年12月21日 19:27
2024年12月24日 19:27

闇夜は小さな星に恋をする~落ちこぼれと言われようが、仲間との絆で強くなる! 魔法学校奮闘記!!~ 翠雨 @suiu11

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