第159話 ガジェット鉱山のダンジョン7

 ハヤト班と合流し、手分けしてマッピングを進めていく。エースパーティが3つも集まっているのだ。2階のマッピングはすぐに終わり、3階に進んだ。


 3階では、ツノイノシシなどの中級の魔物を見つけた。

 このダンジョンが普通とは違うことはわかっているので、もう不思議に思わなかった。


 夜は、ダンジョン入り口の近くにテントを張って夜営した。 ダンジョンから人が出てきたような魔力を、レインが何度が関知したようだが、すぐにダンジョンに戻っていってしまう。気がついて追いかけたくても、班のメンバーを起こす間に遠くまで逃げてしまった。

 しかし、ダンジョンを進んでいけば捕まえられるだろうと、深追いすることはしなかった。


 ダンジョンの入り口を見張る班が一つ、ダンジョンの中を探索する班が二つとし、順番を決めた。

 今は、ハヤト班が入り口を担当している。


「4階は、森って感じだね」

 イアン班とカイト班は二手にわかれて、4階のマッピングをしていた。

「あそことか、花が咲いていてきれい」

 木や草があちらこちらで花をつけていて、穏やかな景色が広がっていた。


「川も澄んでいてきれいだな」

 川や大きな岩など、目印になりそうな物や地形を、地図に書き込んでいく。


「なんだか、のどかだね~。ここに誰かがいるっているのが信じられないよ。逆に、住み心地いいのかなぁ」

「のどかだけど、相手はベルゼバブっぽいからなぁ~。あまり油断するなよ」


 魔力探知ができるということは、魔力食いなのだろう。ほとんどの魔力食いは、国が把握している。成人前の3年間の教育の際、必ず魔力の大きさを計る。魔力食いであることも、そのときわかるのだ。

 そして、魔力食いに対処できる学校が紹介される。特に必要な魔力が多い場合は、エインスワール学園に保護され、エインスワール隊となる。


 つまり、国が把握していない魔力食いは、ベルゼバブである可能性が高い。


「そうだよね。魔力が吸収されちゃうから、魔法が効かなかったりするんだっけ?」

「遠距離攻撃なら大丈夫だけどな。魔方陣も魔力で書いているからなあ~。あんまり近くに出現させると、壊されるんじゃないか?」

 ユージが、レインの方を見た。

「あぁ、僕は皆の魔方陣は、壊さないように気を付けてるよ。そこら辺くらいまでなら、魔法発現を止めることができるかな」

 少し遠くを指差す。

「あっ!! 『身体強化』して、近くに行けばいいんだから、もっと遠くまでなんとかなるかも」


「じゃあ、のろのろ魔方陣書いてたら、消されるってことか」

「そういうことだろうな」


「たしか、魔力食いへの対応って、魔力過多にさせるってやつだっけ?」

 ミハナの問いかけにレインが首をかしげる。

「そう習ったけど、戦闘慣れした魔力食いには効かないんじゃないかな? 現に、僕は魔力過多になる気がしないし」

「そうなの?」

「だって、使っちゃえば減るんだよ。大規模な魔法とか、複数魔法を連発して、吸収できた分以上を使っちゃえばいいんだよ」

 魔法を使うのも早くて正確なレインだったら、それくらいのことはできるかもしれない。


 ミハナが話したのは、昔の魔法事典に載っていたものだ。


 魔力食いは常に魔力が足りなくて、魔法の練習などできていないというのが前提なのだろう。実際、レインも学園に入学するまでは、魔法の練習などできなかった。

 しかし、周りの環境が整えば、つまり、魔力を分けてくれる人物が近くにいれば、魔法を自由に使うことができる。


「何度も気配を感じているやつは魔力食いだと思うけど、あいつは戦闘慣れしているってことか?」


 何度もダンジョンから出てこようとしていることから、彼らが最近馬車を襲っている犯人ではないかと思っている。

 それならば、護衛などと常に戦っていて、戦闘慣れしている可能性は十分にある。


「そうだね。ベルゼバブについてはわからないことだらけだから、警戒しておくに越したことはないよ」


 そんな話をしながら移動していたら、遠くの方で強く光った。


「なんだろ?」

「魔法かな?」

「カイト先生達の方?」


 皆で顔を見合わせた。

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